第120話 本題
「やあセキ。華々しい旅立ちの日になるはずだったのにすまないね」
ハープ東に位置する門。
門の外側には見た目としては美しい緑の絨毯が続き、景色のアクセントとして、色とりどりの実をつける植物も見える。
「いや~……
「手助けは構わんがの……お主とアドニスという組み合わせ。道中のメシのほうが我は心配でしょうがないの」
アドニスの挨拶に手をあげるセキ。
「アドニスの~……メシは~……まずいから~やだ~……」
ベヒーモスもアドニスの腰の布袋から顔を出すと、素直な意見を真っ先に述べていた。
「襲の出現の一番の問題はきみたちにあるって自覚してくれるとうれしいんだけどね……」
アドニスは苦笑いをしながらセキと並び歩き、門の外へと足を踏み出す。
「どの怪物……――いや……どの竜の力かは分かってるのか?」
「竜はどれも今の魔獣とは比べ物にならないとはいえ……それに輪をかけたような理不尽な力だったみたいだ。だから……『
すぐに向かうというわけではなく、
「どうせ命懸けなんだ。それなら倒した後、ベヒーモスの力が少しでも戻るように『
セキはくわえていた
最悪の中でもせめてもの慰めとして放った言葉だが、救いになるほどの心境の変化は得られなかった様子だ。
「きみの言う通りだ……元の竜の状態ならいざ知らず、契約して半精霊となった今、襲を食べるなんてできやしないからね。討伐する以外に力を取り戻す
「それはダメだ。中途半端な強さじゃいたずらに被害が広がるだけだ。
セキが語気を強める。
その意味をアドニスは理解した。
「過去の件……かい?」
「ああ。騎士たちのように集団戦を訓練しているなら、もう少しマシなんだろうけど……
「まったくもってその通りだね。基本的に共闘すると言っても一緒に同じ敵と戦うだけで、連携も何もあったものじゃない」
「おれの村もそうだった。二、三
セキは言葉を探すように
そして……過去を言葉に乗せる決心をつけると弱々しく煙を吐いた。
「
語るうち、セキの心境を表すよう徐々に視線が下がっていく。
その瞳に足元が映った時、さらに言葉を紡いだ。
「まともにやり合えたのは
「きみとカグヤさん……そして『恐獣』の中でも最強格に挙げられる二匹がいてそれはちょっと笑えないね……僕ときみ、せめて同格があと
セキの独白にも似た凄惨たる真実。
アドニスも毅然とした態度で受け止める気ではいたものの、紡ぐ言葉の節々に戦慄と緊張が滲み出ている。
だがそんな中でも、ベヒーモスは相変わらずマイペースさを発揮し、セキによじ登ろうとしている。
そしてカグツチはセキの
そこへ――
「ちょっとー……ランペットで親睦を深めたと思ってたのは
唐突な声に振り向いた
それは海色の美しい髪を、日光石の明かりで煌めかせる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます