第4話:【仕事】
開店前の薄暗い店内に外の光が射している。
カウンターの中には郁人がグラスを磨きながら開店準備をしていた。
『郁人〜おっはよぉ〜♡起きたら隣りにいないからオレ寂しかったぁ〜♡』
ぴえん、と態とらしい泣き真似をしながらカウンターの椅子に座るジャックを横目に見つめながら軽くため息をつき郁人が話し出す。
『既におはようには遅すぎる時間だろう。俺には店の準備もあるし報告の為だと無理やり起こさず寝かせてやった優しさに感謝するべきだ。』
呆れたような顔の郁人にジャックはニヤニヤしながらカウンターに体を乗り出した。
『あっは♡ごめんって、オレってば愛されてるぅ♡ちゅ〜っ♡』
そう軽口をたたきながら郁人の頭を引き寄せ首にキスをする。
はいはいっと軽くあしらいながらさっさと【仕事】の報告をしろと促されはいはいと両手を上げ降参ポーズで椅子に座り直しジャックは報告を始めた。
『あぁ〜、今回は割りとスムーズに終わったよ。未成年の売春斡旋に関与してたのは全部で5人。少数精鋭って感じでやってたつもりらしいよ。潜った感想としては精鋭って割りにガッバガバだったって感じ?とりあえずルカちゃんから貰ってた情報通り、SNSを利用して男女問わずに未成年かき集めて金ズルにしてた。九十九にも協力してもらって中の様子探ったからこれがその報告書。あとで読んで。』
そう言ってUSBを渡し続きを話しだした。
『ホント探れば出てくる出てくる。こんなクズは棄てても棄てても湧き出てくるから困っちゃうよね。とりあえず今回は彼らの表向きの職場に【飾り付け】してきてあげたよ。…綺麗にね。』
スっと瞳から光を消しニヤリを笑みを浮かべるジャック。
『お疲れ様。次の【仕事】は少し休んでからでも構わない。』
一言そう言い再び店の準備を始める郁人にいつの間にかいつもの調子に戻ったジャックはケラケラ笑いながら
『りょ〜かい♡まぁ次もいい【仕事】するから期待しててよ♡』
と席を立ち手を振りながら店を後にしていく。
カランッとドアの開く音と共に人混みに紛れていく彼を見送った。
この店はバーの形をとっているが実際には世間から溢れた人間が集まってダークヒーローの真似事のような事をしている。ハッカーや殺人鬼、情報屋。とても表に出ることは出来ないような人間が集まり世の中の【ゴミ掃除】をしているのだ。いつから、何故こんな事をしているのか、それはわからない。ただわかっているのは郁人の前にバーのオーナーをしていた人が始めたらしい、という事だけ。そしてそれを郁人が引き継いだ。ただそれだけなのだ。誰も聞こうとしないし調べもしない。それがここの暗黙のルールだ。
JUDGMENT 柊さくの @bloodcross
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