〇〇を見ながら駄弁るだけのお話。

阿月

キングコング:髑髏島の巨神を見ながら駄弁るだけのお話。

「本当にこんなの見るの?」

「見る」

「怪獣……、好きなの?」

「怪獣というか……、リアルな大ウソつき映画は好き」

「大ウソつき……」


 本日、テーブルの上のポテチは、湖池屋のプライドポテト、神のり塩味。

 湖池屋のそれは、繊細な味で、ジャガイモっぽさがとても美味かった。

 ドリンクは麦茶だ。

 一袋398円の20パック入りの徳用袋を、水出ししたもの。


「お、いきなり顔見せか、コング」

「うーん。何かリアルっぽさに欠けてる気が……」

「で、ベトナムかー。サミュエル・L・ジャクソン濃いなー」

「……」

「あ、地獄の黙示録だ」

「というか、ここのカメラワーク格好いいわね」

「あ、全滅した」



 麦茶で口を湿らせながら、ポテチを銜える。


「お、何かこの怪しい森の雰囲気、いいなあ」

「そうね……」

「あ、蜘蛛だ。おー」

「人間弱いわね」

「まあ、相手はモンスターだからね」



「あれ、一人だけAK持ってる。何か意味あるのかな」

「あるんじゃない?」

「お約束みたいな原住民だねえ」

「東洋系……かな」

「そうだね」


「サミュエル・L・ジャクソン、イカれてる。まあ、ベトナムでいろいろあったんだろうなあ。自身が負けることを許せない。だから、いろいろなものを認められない」

「そんな上官に当たったら、しんどいわよ」

「うん。それはその通り」


「あ、日本刀使ってる」

「化け物には、刃物の方がいいの?」

「そんなバカな、とは言いたいね」

「この後ろ足のない怪獣、いまいち迫力に欠ける気が」

「うーん」

「あ、最後は武器使うのか」


「あれ、コング、ヒロインに手を出さなかったわね」

「そもそもニューヨーク行かなかったな」

「それ、古いヤツでしょ」

「うん、世界貿易センタービル登るヤツ」

「エンパイアステートビルディングじゃなくて?」

「あれ? そうだっけ?」


 いつの間にか、ポテチは空になっていた。


「うん、面白かった。ひどく正統な南洋冒険映画だった」

「南洋冒険映画?」

「秘境冒険小説というべきかな。映画というよりも。アランクォーターメンとか」

「知らない」

「宝島とか、ガリバー旅行記とか」

「ああ、それならわかる」



「知られてない場所で、存在するはずのないものが存在する。それがロマンなんだよ」

「ロマン……ねぇ。はいはい」

「うーむ。理解してもらえないかー」

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