第2話 じいちゃんこれぼったくりじゃね。
「じいちゃん、じいちゃん、くるみさん来たよ」
バタバタと走ってきた僕に対してじいちゃんはいつも通りに怒ってた。
「五月蝿い、今テレビ見てたんじゃ、大事な話を聞いていたのに」とじいちゃんはいつも通り腹を立てていた。僕はそんなじいちゃんに「でも、お客さんの方が大事でしょ、テレビより」と言った。
じいちゃんは「5対5じゃ、テレビもお客さんも大事じゃ、清和とこんなに話している間に客が帰る、清和支度しろ」と言った。
僕は素直にはいと言った。じいちゃんには逆らえないからね。
ちなみに支度というのは、あの血が入った万年筆とバンドエイドと契約書である。
なぜバンドエイドが必要なのか、それはそのバンドエイドは不思議な効力つまりは少しだけ血が混じっているバンドエイドでそれを貼るだけで不思議な力が発動するというものなのだ。
バンドエイドの効力は水に入っても大丈夫。
誰かに切られても大丈夫、バンドエイドが再生するから(切られるって可笑しいけど)。
ただ1度貼ったら、取る事ができるのは最短で5年後。バンドエイドは色んな形に選択できるから肌に馴染むし、化粧をしてもバッチリ隠せる。
人によってはバンドエイドじゃなくて、直接色線を選択する人もいるけど、僕的にはお勧めしない。
だって色線は人を壊すこともあるから。
色線のやりすぎは人を動かし、人を破滅させるだけだからってじいちゃんも言ってるしね。
そんな中でもじいちゃんの色線は人を魅了するくらい凄い。
そんなじいちゃんの色線に魅了されてじいちゃんの元を訪れてくれたのがインスタグラマーの胡桃湯葉(くるみ ゆは)さん、24歳の女の子。
「こんにちは、予約していた胡桃です。初めて式泉朔風(しきせん さくふう)さんに会えて嬉しいです。実は手首に蝶が散りばめられた一本線のバンドエイドを貼ってもらいたいと昨日話していたこと、お願いできますか?」
じいちゃんは日永(ひなが)を見る目と一緒だった。日永はじいちゃんの孫娘、つまりは僕の妹である。日永への可愛がりは異常なほどである。
それをじいちゃんはくるみさんにしてた。
「当たり前じゃろ、その前に契約書にサインしてくれるかい、契約は一応5年、その後は何年かに変えられるからのぉ」
契約書に書くサインは勿論、血の入った万年筆を使う。なぜなら、これが線と線を結ぶ繋がりとなるからだ。
くるみさんはサインをして、その後じいちゃんは言った。
「じゃあ、契約は成立じゃ、昨夜要望したものがもうできているから、よかったら貼ってみて下さい。清和、突っ立っていないで早く渡しなさい。お姉さん困っているだろ、すいませんねぇ、うちの孫が」
ぼくは理不尽な言い方でムカついた。
だが、これも仕事だから、笑顔でお姉さんに渡した。
お姉さんは受け取ると目を輝かせた。
「ありがとうございます。嬉しい、大事にしますね。あのこれインスタに載せても大丈夫ですか?」
じいちゃんはインスタに詳しかった。
笑顔でじいちゃんは「インスタでもTwitterでも大丈夫じゃよ」言った。
それを聞いたくるみさんはありがとうございますとじいちゃんの手を握って言った。
じいちゃんはその手を握り返して、くるみさんの手にくしゃくしゃになった紙があった。
くるみさんはその紙を見て「カードでも大丈夫ですか?」と聞いた。
じいちゃんは「大丈夫ですよ、支払ってくれれば」
くるみさんはぎこちない笑みを浮かべて帰って行った。
僕はくるみさんが帰った後、じいちゃんに聞いた。
「くるみさん、何で最後らへん元気がなかったの?」
じいちゃんは答えた。
「それはこの色線が少し値が張ったからじゃよ。そんなに高いものでもないんじゃが、今日は特別高くて10万じゃった。普通は1万円なんじゃが、色んなものが付いたからじゃな」
じいちゃんは笑っていたが、僕はぼったくりだと思った。
続く
色線屋 linest ソノハナルーナ(お休み中) @eaglet
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