over extended.
「おはようございます」
「おはようございます」
「事後処理の関係で、学校にはしばらく行けません」
「はい」
「今日からは旅をしようと思います」
「わたしは、それについていきます」
「質問があります」
「どうぞ」
「なぜ全裸?」
「いや、服いらないかなって。わたしの部屋だし」
「あんなに着飾ってたのに」
「あなたがわたしの顔を認識したから、もう服必要ないです」
「そうなの?」
「そうなの。で、どこ行くの。わたし、どこまででもついていくよ」
「そう。俺はひとりではどこにも行けません。あなたの先導が必要です」
「承知しております。あなたのためなら、どこにでも」
「俺は」
「はい」
緊張の一瞬。
「最近できたらしいクレープ屋に行きたい」
「え」
「クレープ屋。移動車のやつ。生クリームのクレープ」
「あの」
「はい。どうぞ」
「徒歩2分の場所なんですけど」
「はい。そうらしいですね」
「なんか、もっとこう、地球の裏側とか、宇宙とか、そんな感じのは」
「ええ。一切ありません」
「そうなの?」
「俺にとっては」
彼。にこにこしてる。
「俺にとっては。徒歩2分のクレープ屋に行ったり、徒歩10分の学校に行ったり。それこそ、お風呂場やトイレに行くことが。地球の裏側や宇宙よりも、価値がある」
価値が。
「価値がある。あなたと一緒の、身近な移動が。俺にとっては。価値がある」
わたしに価値があるのか。
「うん。わかった」
わたしに。
「嬉しいです。トイレの裏側までお供します」
「え。トイレに裏なんてあるの?」
「ものの例えです。気にしないでください」
「では。早速ですが」
「はい。クレープ屋さんですね。行きましょう」
あっ。
「わたし待ちか」
服着るの忘れてた。
路行 (Hi-sensitivity) 春嵐 @aiot3110
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