この世界はなんて気まぐれなのでしょう

misora

第1話 思い出せないトラウマ

錆びてボロボロな配管の上に猫がバランスを取りながらスタスタと歩いていくのが見える。

さらに視野を広げると圧巻するほどのパイプが絡まった毛糸のようにごちゃごちゃに延びていて街の中もたくさんのパイプに埋めつくされていた。

「あの猫はこのパイプの上を散歩してチジョウに行けるのかな。」

そんなことを少女は本気で夢見ていた

「チジョウ?そんなの本の中のお話だろ!そんな本ばっかり読んでるから頭おかしくなったんじゃないのか?」

兄は買い出しをしたものを抱えながら隣を歩く

「でも色んな絵にも本にも!タイヨウって言うこの星を照らすほど眩しく燃えている星があるんだって書いてある!きっとこの人達はタイヨウを見たんだよ!」

そうやって兄の前に自慢げに掲げた本は昔の冒険家が書いた本の内容を絵にした絵本だった。

「お前なぁ、夢を見るのもいいけどこれからのことも考えないとだぞ?働いてお金稼いでそしたらお母さんを楽にできるし美味しいご飯も沢山食べれるぞ!まぁ薬はちっと高いけどな」

お母さんは何かの病気にかかっている。だけど何にかかっているのか知ることが出来ないこんな辺境の穴に医者なんて人は来ないだろう

「まだ買ってない薬が何個かあるはずだ、聞くものがあるといいんだけどな。あーあどこかにガラクタでも落ちてないかな」

ガラクタは昔の子の世界が豊かだった頃人間はキカイや便利な道具で溢れていた。その時のキカイが埋まっていることがある。それは偉い人が高値で買取ってくれると噂だった

「でもそんなに上手くいかないよね。偉い人が無理やり見つけたガラクタを奪ってくなんてよくある事だし」

家の近くの赤いパイプが見えてきた家が見えてきてそこをめざしてスピードを上げた


  その時 体が浮いているように感じた、右が聞こえなくなり左の耳からは激しい 爆発音が聞こえ体は熱風を浴びてヒリヒリする。

 目を開けると家が燃え、目の前は火の海体を強く打って自由に動けなかった。

「おにいちゃ、ん、」

 朧気な視界の中に倒れているお兄ちゃんが見えている

 だが、明らかに 赤い。そして小さい。

 意識が覚醒していくと視界もクリアに見えてくる。クリアになっていく度に息が 上がり恐怖で体が震える。

 

 目の前には地獄が広がっていた


 兄は四肢を無くし、転がっていた



 恐怖で体が動かない。目の前で死んでいる兄を見て燃える家を見て。心はどんどんの壊れていった。

涙が出てくるだが掠れかすれにしか声は出ない

やがて自分が何を言っているのか分かるようになってきた。

 必死に「やだ、やめて、たすけて」と声に出している。

 少女の悲しみなど考えずに今度は上から大きな音がした

泣きながら上を向くと天井が崩れ大量の水が降ってきた

 激しくうねる水の中で少女は意識を飛ばした。

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