In the car
ジャックがハマーのエンジンをかけ直し、V8のターボ・ディーゼルが咆哮を上げるとほぼ同時にカーステレオが大音量で東海岸系のギャングスター・ラップを車から半径10
ハマーのナンバープレートは<
「うるさい車だなぁ。会話ができないじゃん」
「瞬間最大出力210Wのハイレゾ対応だぜ」
「電子レンジ並だな、バッテリー持つのか?」
「V8ターボ・ディーゼルはそんなやわじゃないぜ。ヘンリー・ジョンソンところで買ったんだ覚えてるか?」
「バスケでコリントン・ヒル相手に残り2秒で逆転の3ポイント決めたやつだろ」
「あれはクレイジーだったな。ヘンリー自身がNBAのマークみたいになって固まってたもんな。後でみんなでお祝いでトイレットペーパー投げたら校長の頭に直撃したのもマジで笑ったよな」
4輪すべてを軋ませ、ハマーがジャックとドワイトを乗せて走り出す。
「しかし、おまえ太ったなぁ」
と改めてジャックを見てドワイトが言う。
ジャック・ケンプはどこから見てもアメリカのストリート・ギャング。
すべてが過剰にダブダブで金ピカでジャラジャラだが、着ているものアクセサリーすべてがどこか安っぽい。
ただ、羽振りは良さそうだ。
「おまえこそプロスポーツ選手だろ?なんでもっとパンプアップしないだよ。栄養士とか付いててチキン喰えとかカロリーコントロールされてんのか?」
「おれ一応QBだぜ。おまえ元レシービングTEだろ?シャーマン戦車みたいになっちゃってるじゃない」
「ドレッド止めたからな」
ジャックが剃り上げた頭を擦りながら喋る。
「車、何乗ってるんだぁ?EVとか言うなよ」
「フォードのフォーカス」
「嘘だろ」
「一年ごとにチームが変わるたびにその街の中古で下駄代わりに乗り捨てだよ」
「タフ&ファックだな」
「タフ&ファックだよ」
実際にタフ&ファックなのでふたりとも急に無言。
「それよりこんな夜更けにどこ行くんだよ?」
「運動公園」
「冗談だろ。しかし、相変わらず、飛ばすんだな」
「この辺の警官はほぼ高校からの
「妹がかわいくて太かったやつだろ」
「違うよ、それはダグ・ビッグスだ。お前は18で完全にこことブチッと切れてるんだな」
また無言。実際そうだ。
「変なもん入ってないよな?」
「勝手に人の車のグローブボックスを開けんなよ。エージェントに言われてるのか地元のワルとは関係切れって」
「そこまでエージェントは言わないし、エージェントなんてクソだぜ。まぁおれがもっとすごい選手だったら手のひら返してホイホイ扱うんだろうけど」
ドワイトは車のグローブボックスを開けるのを止めた。
「運動公園で何するんだ?」
「キャッチボウル。俺だって元フットボール選手しかもTEだぜ。一回現役のNFL選手のパスを受けてみたいだろ。それにお前がちょこちょこブラウンズボロに帰ってきてることはずーっと知ってたし」
帰郷 美作為朝 @qww
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。帰郷の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます