第17話 あなたと再びご縁がありますよう
演劇部の部室を出て、無言のまま廊下を歩いていると、反対側の廊下の奥から如月と城島が手を振って歩いてくる。
「三枝君、今日は友達が沢山できたよ!」
無邪気に笑う如月の後ろには、すっかり仲良くなった女子生徒たちが取り囲んでいた。
そして城島の後ろにも、微妙な距離感を保ちつつ、やはりついてくる女子達がいた。
「三枝さん、それでは私はこの辺でお暇致します。本日は大変失礼致しました。」
幸がそう言う言って立ち去ろうとすると、龍二は彼女を引き留め、姿勢を正すと、敬礼し、こう言った
「あなたと再びご縁がありますよう、祈念申し上げます」
ただならぬ雰囲気に、城島と如月は呆然と立ち尽くした。
あの三枝龍二が、自分から女子に話かける、そんな珍事を目にした思いであった。
そして幸もまた振り返ること無く小さく頷き、その場を去った。
それは火照った顔を見られたくないという思いと、如月の表情によってであった。
この鈍感な男たちにあって、如月だけは気付いていたのである。
それが変装した幸本人であることを。
「しっかし、徳川は自分の母校に連れてくるだけ連れてきて、自分はバックレだもんなあ」
城島がそう呟くと、如月優は、何となく言っていいものかと思いつつ、先ほどの美しく変装した幸に思いを馳せるのである。
彼だけは、幸の本当の美しさに気付いていた、唯一の友人であるのだから。
帰りのバスの中で、龍二を横目で見つめる幸のことを、如月は時折気にするのである。
幸の心の変化を敏感に捕らえつつ、優本人の気持ちを押さえながら。
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