第13話 ロボット
「ねぇ…」
「ん?どうしたの?」
「あの建物…なんか変じゃない?」
私は、たまたま見つけた一風変わった建物を指差す。
それは、探せばいくらでも見つかるビルとは違い、かなり横に大きい。
高いというよりは、広いと言うべき建物。
しかも、外装が見たことないくらい今未来的だ。
「ずいぶん大きくて…近未来的だね。何かしら、重要そう」
「だよね?…もしかして、あれがライブラリーってやつなのかな?」
ライブラリー
『コンソール・リング』にさらなる情報をインストールするために、向かうべき施設。
もしあれがライブラリーなら、今すぐ行くべきだね。
「どうする?行ってみる?」
「そうだね…行こっか?」
ルーにも許可を取り、二人であの建物へ向かうことに。
スナイパーを警戒しつつ、いくつかのビルを越えて目的地までやって来ると…
「…なにあれ?」
その建物には何人もの警備兵が居て、侵入者を寄せ付けないようにしていた。
「同じ格好をしてるって事は、多分この建物を所有してる組織の兵士なんだろうね。…でも、あのマークって――」
どうやらルーは警備兵の服に付いているマークを知っているらしい。
4つの小さな三角形で出来た、大きな三角形。
その中央に目が付いている。
そして、その目の付いた三角形を囲むようにある円と鎖……何あれ?
「フリーメイソン?…いや、フリーメイソンには円と鎖なんて無かったはず…」
「?」
「フリーメイソン自体、都市伝説扱いされるような秘密結社だし…アレが正式なロゴだったとしても不思議じゃないか」
「??」
「にしても、どうしてこんな所にフリーメイソンが?…もしかして、私達を転生させたのは、フリーメイソンなの?」
「????」
さっきから、ルーがよく分かんない言葉を何回も言ってる。
あのマークは、フリーメイソン?って組織のマークらしい。
「フリーメイソンってなに?」
「えっ!?」
私がルーにそう聞くと、ルーは信じられないと言いたいような顔で、私の事をまじまじと見てくる。
「フリーメイソンを知らないなんて……あー、フリーメイソンって言うのは古来から世界を裏側から支配してる、と言われている秘密結社の事だよ。まあ、都市伝説とか陰謀論の類だね」
「な〜んだ。じゃあ別に気にしなくていいね」
「…いや、それはどうなの?」
ルーが釈然としないという目で何か言いたげにこっちを見てくる。
「だって都市伝説や陰謀論の類なんでしょ?そう言うのは、苦しい現実から目を背けたい心の弱い連中が言う事なんだよ。よくいたよ。神に祈る奴とか、よく分かんない謎の偶像を大切にしてる奴とか。後は、家族の写真とかを見てニヤニヤしてる奴ね。下らない事するよね?縋ったところで何も変わらないのに」
「………」
私がバッサリ切り捨てると、ルーは見るからに不快そうな顔をしてる。
……もしかして、家族の写真まで切り捨てるのは良くなかったかな?
ルーは亡き家族の為に、国の犬として戦い続けたんだから、写真の一枚やニ枚を持っててもおかしくない。
それを下らないって切り捨てるのはちょっと…
自分の失敗に気付き、どうやって謝ろうかと考えていると、ルーが無表情で口を開いた。
「…何でもない。ミドリの言う通りだよ。そんなのに縋ったところで何も変わらない。下らない事だね。こんなのに縋るなんて」
そう言って、懐から取り出した一枚の写真を、破って捨てた。
その時のルーはとても悲しそうな顔をしていて、なんだか苦しそうだった。
そんなルーを見ていると、なんだか私まで苦しくなってきて、私はルーを抱きしめる。
「良かったの?」
「うん……私は、良くやったよ。最後まで祖国の為、死んだお父さんとお母さんの為に頑張った。だからもういいの」
そう言いつつも、ルーの声は震えていて、とても苦しそうだ。
過去との決別というのは、かつての自分を切り捨てる行為。
きっと、心に小さくない傷を負ったに違いない。
「苦しくなったらいつでも言って。私はルーの味方だよ」
「…ありがとう」
私は優しくルーを抱きしめ、離れるとアサルトライフルを取り出す。
「AK47。これ、使いやすいんだよね」
「ふふっ、当然よ!なんたって我が祖国、ソビエト謹製の逸品だもの!」
「そうだね。世界一生産された銃だもん。その性能はお墨付きだよ」
私は誇らしそうにするルーを横目に、建物の屋上に居る警備兵に狙いを定める。
「地上は任せる。私は上のノミを殺るから」
「了解。一匹でも取り逃がしたら…分かってるね?」
「分かってるよ。ルーこそ一発でも外したら粛清だからね?」
「なにそれ?外したらどうなるの?」
「今夜は反撃なし」
「うわっ…これは外せないね」
そう言って、ルーは慎重にライフルを構える。
私も一匹も取り逃さないように慎重に狙いを定める。
そして、
「始めっ!」
ルーの合図で私達は引き金を引き、警備兵を撃つ。
最小限の弾丸で一人仕留め、次の警備兵に狙う。
これを繰り返し、奴等が反撃してくる前に私は13人殺った。
しかし、ルーもあっという間に6人仕留め、リロードしてまた6人仕留めている。
その狙いは正確で、あれだけ連続して撃ったにも関わらず、一発も外していない。
流石はルーだ。
あんなに連続して撃ちながら一発も外さないなんて、とても私には出来ない。
ルーがいかに優れたスナイパーか、よく分かるね。
「場所変えるよ」
ルーはすぐに起き上がると、私の腕を引いてすぐにその場を離れる。
反撃される前に、場所を変えてカウンターを食らわないようにする。
スナイパーの間では常識みたいなやり方らしいけど、それは本当らしい。
あっという間にその場を離れるルーの動きは洗練されていて、何度も狙撃を行い、その度に場所を変えてきた事がうかがえる。
「ここならまだ見られてないね。ミドリ」
「分かってるよ。気付かれる前に殺っちゃおう」
まだバレていない場所に移動すると、すぐに私達は銃撃を再開する。
どうやら屋上に居た警備兵は一匹も逃げていないらしく、アサルトライフルを構えて私達のことを探している。
そんなの警備兵に容赦なく私は銃撃を浴びせ、確実に殺る。
ルーも地上に居る警備兵を一人ずつ正確に撃ち抜き、淡々と始末していく。
とりあえず、上にいた警備兵はひとり残らず殺った。
地上の警備兵は…今、ルーが最後の一人を撃ち抜いて終わり。
「掃討完了。さ、あのジップラインに戻るよ」
さっき見つけたジップラインの場所に向かい、私達はそれを伝って謎の建物にやって来る。
そこで、私はある違和感に気が付いた。
「血が出てない?」
頭を撃ち抜いた警備兵の死体からは、一滴たりとも血が流れていなかった。
中には首に穴が開いている死体もあるというのに、血が一滴も流れていない。
ましてや、血の臭いすらしない。
これだけ死体があれば、血の臭いがしたっておかしくはないはず。
それなのに、これは……
私が困惑していると、ルーが死体に手を当てて何かを調べている。
そして、コイツらが身に着けているヘルメットを外した時、私達はその違和感の正体を理解した。
「馬鹿な……ロボットだって?」
「な、何コイツ…こんなに精巧に作られたロボットなんて見たことない。…しかも、体とか顔とかの皮膚の質感が人間のそれと同じ。どんなオーバーテクノロジーで作られてるのよ…」
ヘルメットの下にあったのは、人の顔などではなくロボットの頭部。
人に近い見た目に作られているものの、完全にロボットだ。
しかも、ヘルメットに隠れていない部分の肌や、首などは人間の肉体と何ら変わらない感触がある。
まるで、何処かのロボット映画のキャラクターのような見た目をしている。
「私達が倒したのは…ロボットだったの?」
そう呟いた直後、突然それまで動いて居なかったロボットが動き出し、私の方を向いた。
「そんなっ!?頭部は破壊したはずなのに!!」
「相手はロボットだよ!?しかも、傍から見ると人間にしか見えないような見た目と質感に作られた、オーバーテクノロジーのね!」
「頭を破壊したくらいだと、機能停止したりしないってことね!で?これどうする?」
起き上がったロボット達が私達を取り囲むように立ち、銃を構えている。
しかし、すべてのロボットが立っているわけではなく、一部のロボットは未だに倒れている。
そのロボットと、今私達を取り囲んでいるロボットの違いが分からない。
銃痕はほぼ同じ数しかない…
となると、撃ち込まれた弾の数じゃない。
じゃあ何が理由で…
「ミドリ…これ、私達死なないよね?」
「死なないようにやるしかないでしょ…」
「だよね…で?弱点は分かる?」
「分かんない……でも、多分胸を撃てば良いんじゃない?ロボットのコアって、胸部にありそうなイメージあるし」
私はAK47を構え、近くにいるロボットを狙う。
ルーもライフルを取り出して、いつでも撃てるように構えている。
そして、緊迫した空気が流れ……
「避けて!」
ロボット達が一斉に射撃を開始し、私達に弾丸の雨が降る。
私もルーも体勢をかなり低くして銃弾を躱し、胸部を狙って撃つ。
すると、胸部を撃たれたロボットは急に倒れ、動かなくなってしまった。
さっき頭を撃ち抜かれたのと同じ反応だけど、効果があると見てやるしかない。
私達は銃を撃ってくるロボットの胸部を撃ち続け、何とか生き残ることが出来た。
しかし、いつロボットが起き上がるのか分からないので、すぐに走ってその場を去った
傭兵と工作員 カイン・フォーター @kurooaa
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