第一章-星籠-
第一話
ぼくと
でも、それ以上に、決定的に違っていたものがあった。微笑み方だった。瑠璃は、とても、綺麗に笑う。白い
月明かりが薄く射していた。天球を覆う灰色の雲が、所々、
ひらいた
(瑠璃)
再び雲に閉ざされていく空を眺めながら、ぼくはそっと、彼の名前を心の中で呟いた。遮るものの何もない夜闇の中、
水の粒子を含んだ冷たい空気が頬を撫でる。方舟を包む白の
ふわ、と頬をかすかに風が撫でて、ぼくは、ふっと
「瑠璃?」
「あっ、ごめん、起こした」
「ううん。おかえり」
空から戻った瑠璃を抱きしめる。瑠璃の手も、脚も、肩も、震えていた。平静を装っているつもりだろうけど、明白だった。足なんか、体を支えるのがやっとなくらい
「
瑠璃が、ぼくの名前を呼ぶ。凛と空気を震わせて、ぼくの胸を静かに打つ。奏でるように心地良い声。
「ん?」
問いかけて
「今日も、ちゃんと戻ってこられた」
玻璃のところへ。そう言って瑠璃は微笑んだ。
「ただいま、玻璃」
瞳を閉じて、再び伏せられる顔。
瑠璃を抱えたまま、ぼくも、そっと瞼を下ろした。今夜はもう、客は来ないから、夜が明けるまで、ふたりで眠ろう。
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