10話.[思っていたの?]

「やべえ、学校に行きたくねえ」

「まだ一応今日は休みだから安心しなよ」

「でも、今日が終わったら学校なんだぜ? まだ俺が由望達と同じクラスだったらいいんだがな」

「私からも行くから今日を楽しもう」


 無限にあったらありがたさを忘れてしまいそうだからこれでいいのだ。

 多分、普段は学校があるからこそ土日やこういう休みが嬉しく感じると思う。


「お前はどうせ約束を破るからな、学校だと柏倉も普通に近づいてくるから安心できないぜ」

「あくまで友達としてね」


 私の方は最近本を買ったから読むことにする。

 それなりに値段がするけどこれが面白くていいのだ、だからついつい夜更をしてしまったりしているから今日で終わらせて休み前のリズムに戻さなければならない。

 そうしないとまだまだ暑いのもあってやられてしまうから、迷惑をかけてしまうから仕方がない。


「おい、俺がいるのに本なんか読むなよ」

「まあまあ、後でちゃんと付き合うから読ませてよ」

「駄目だ駄目、俺を優先しろ」

「はは、真っ直ぐだなあ」


 いいか、彼が帰った後でも読めるからそのときにしよう。

 それよりこの子は自分の方からなにかをしてくることがないけど、どうすれば動いてくれるだろうか。

 自分ばかりが動くことになって不公平などと言うつもりはないものの、なんか別れる間際のカップルみたいに見えてしまうからなんとかしたい。


「あー、少し体が冷えるなあ」

「家の中も微妙な感じなのになにを言っているんだ?」

「……実際にそうだもん」

「もんってなんだよ」


 くっ、無理か、このままでは私が恥ずかしくなるだけだからやめておこう。

 そもそも無理やりやらせるようなことになったら意味がない。


「つか普通に言えばよくないか?」

「知らない知らない」

「ほら」


 知ら――だけどやっぱりしてもらえる方がいいと分かった、自分からするとなるといま大丈夫だったのかなとか抱きしめている最中に不安になるからこの方がいい。

 

「まああれだ、俺としてはもうちょっと時間がかかるもんだと思っていたからまだ対応しきれていないところもあるんだよ」

「え、私が拒絶すると思っていたの?」

「一緒にいてくれているからって絶対というわけじゃねえだろ、だから高校卒業までになんとかできればいいぐらいの考えでいたんだ」


 え、一年生中に決めるとかではなかったのか。

 ずっと曖昧な距離感のままでいるとかごめんだから動いてよかった。


「自分から動いてよかったよ」

「男としては情けねえがな」

「そんなことはないよ、受け入れてくれてありがとう」


 少し力を込めることで伝わってくれたらいいなという狙いがある。

 まあでも、ずっと抱きしめていてなにをしているのかという感じではあったね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

127作品目 Rinora @rianora_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説

128作品目

★0 恋愛 完結済 10話