09話.[休むことにした]

「やっと関係が変わったのね、おめでとう」

「ありがとう――あ、ちなみに昨日はどんな感じだったの?」

「あなた達みたいにお祭りを楽しんだ後はすぐに別れたわよ?」


 あ、そうなのか、離れたくないなどと言ってすごい夜を過ごしたとかではなかったらしい。

 まあ、隠しているところもあるかもしれないけど隠したところでという話になってしまうから本当にそうなのだろうと思う。


「ちなみに今日、千葉君はなにをしているの?」

「課題かな、やろうよと誘ってもいままで『面倒くせえ』って言ってやっていなかったから」

「ふふ、容易に想像することができるわ」


 ちなみに私の家でやっているから早く帰ってあげないと拗ねてしまいそうだ。

 でも、彼女とだってゆっくり過ごしたいからそれはそれこれはこれで片付けてしまうことにした。


「うーん、だけど柏倉君は積極的になりそうな感じがしたのになあ」

「あのとき言ったことは嘘ではないわ、二人きりのときは全く積極的にやってこないのよ」

「もやもやしていそうだね」

「そういうのは少しあるわね」


 一緒にいたいなら柏倉君を呼んだらいいよと言ってみると「今日はいいわ」と返されてしまった。


「由望、待っているだけでは変わらないわよ」

「大丈夫、どうせすぐにくっついちゃうから」

「はぁ、私もそれぐらいできればもう少しぐらいは……」


 そんな会話を一時間ぐらい続けたものの、結局柏倉君に呼ばれたとかなんとかで解散することになってしまった。

 少し残念だったけどいまでも安定して喧嘩をせずにいられているということにだけ意識を向けて一人家までの道を歩いて行く。


「あ、帰ってきてくれてよかったよ」

「お父さん? まだお昼前だけどどうしたの?」

「そろそろって話になってさ」


 おお、つまり母が決めたってことか。

 今日帰ってきたときになんて言うのかが気になったものの、時間が経たなければ確かめようのないことだからとりあえず前に進めることにする。


「家に入ろうよ」

「い、いや、それはまだ駄目だろ」


 父は「また来るよ」と言って歩いて行った。

 これを言うためだけにわざわざ少し離れたここまで来るなんて律儀な人というかなんというかという感じだ。


「ただいま~……って、はぁ、寝ちゃっているよ」


 机の上に置いたままだから確認してみたら大して進んでいないようで……。

「行くな、お前がいなかったらやる気が消える」と言っていた彼にもう少しぐらいは意識を向けてあげるべきだっただろうかという考えと、いやでも珠恵ちゃんに呼ばれていて受け入れたわけだからちゃんと守らなければいけなかったわけだしという考えと、ごちゃごちゃになって忙しかったから結局私も休むことにしたのだった。

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