第31話 海よりも深い愛を探して いた、白馬の王子様
愛海は美佐雄の助言の元、色々な場所を探し回ってみることにする。その始めがホストクラブだった。ここにだったら愛海の求める理想の男性がいるかもしれない。そう思って、愛海は静香と遼子を連れてホストクラブに来ていた。
「愛海、今日はありがとうね。こういう所来てみたかったのよ」
静香が席に着いた途端にそう言う。
「うん。ありがとう。私もここは初めて」
遼子が辺りを見回しながら言った。
「良いの、私が来たかったから誘っただけだし」
三人はかなり良質のホストクラブに来ている。ホールは広くソファもふかふかだ。静香なんかはぼよんぼよんと座り心地を堪能している。
「ご指名などありますか」
と、店員が聞いて来る。愛海は考えないままにこう言った。
「とりあえず、ナンバーワンからスリーまでの三人を指名するわ」
愛海がそう言うと、静香と遼子の顔が期待に満ち溢れる。
「すみません、今日はナンバーワンの者がお休み頂いてまして、ナンバーツーからナンバーフォーまでの者ならいるのですが」
「なら、それでいいわ」
「畏まりました」
開店と同時に来ているので、まだ対抗の客は来ていないらしい。すんなりと上位三人を呼べた。
「ナンバーツーからナンバーフォーって、気合い入ってるね愛海」
静香が嬉しそうに言う。
「なんか愛海様々ね」
遼子が言った。
「当然よ。私の求める白馬の王子様は雑魚とは違うの」
愛海が厳しい言い方をする。
「なんか元の愛海に戻ってきてない」
静香が指摘した。
「うん、なんかそんな気がする」
遼子も同意する。
愛海としては美佐雄とのことで少し吹っ切れた自分がいたのだ、おそらくそのせいだと思われる。
「こんにちは、本日はご来店ありがとうございます。ナンバーツーのリョウでです」
「ナンバースリーのヒデキです」
「ナンバーフォーのケンです」
少しすると、三人のホストがやってくる。リョウとヒデキが愛海の隣に座り、遼子の向こう側にケンが座った。
「お姉様方は何の集まりなんですか」
リョウが聞く。
「私達、仕事の同僚なんですよ」
遼子が答える。
「へぇー、何の仕事か当てて良いですか」
ヒデキが言う。
「おっ、絶対当たらない自信ある」
静香が言った。
「そう言われると当てたくなるなー、絶対当たらないってことはレアな職種だから、意外と建設現場だったり」
「ガテン系女子ってやつですね」
「確かにそうは見えないな」
ケンとリョウが言った。
「ははは、ある意味近いかも」
「でもぜーんぜん違う」
「「ねー」」
静香と遼子が答えた。
「うーんじゃあ看護師さんとか」
ヒデキの二度目のトライだ。
「ぶっぶー」
「外れ―」
静香と遼子がけらけら笑う。
「お姉さん方、ヒントは無いですか」
ケンが聞く。
「子どもを相手にする仕事だよ」
愛海が答えた。
「わかった、保育士さん」
リョウが言った。
「それも違う」
「残念」
静香と遼子が答える。
「もうギブ、教えてお姉さん方」
ヒデキが手を挙げながら言った。
「ふふーん、戦隊だよ。スーツアクター」
「ミネラル戦隊っていう戦隊やってます」
静香と遼子がにやにやしながら答えを言った。
「ああー、つまり女優さんか。確かに皆さん綺麗だもんな」
「これは答えられないですね」
ヒデキとケンが言う。
「ところで、お姉さん方。なんてお呼びしたら良いですか」
リョウがそう聞いた。
「愛海よ」
「静香って言います」
「遼子です」
「愛海さんに静香さんに遼子さんっすね。了解です。覚えました」
ケンが言った。
そんなこんなで、三人が楽しんでいると、愛海がトイレに行きたくなり、席を立った。その頃にはリョウとヒデキは他に指名をとられていない状態だった。
愛海はトイレから戻る途中で、酔っていたというのもあり、スタッフルームの中がどうなってるかを覗いてみることにした。すると、先ほど指名していたリョウとヒデキの声が聞こえてくる。
「またデブのお守りかよ。最初の卓のが全然良かったよ」
「ああ、相沢さんですね。あんなにデブじゃ風俗に堕とすことも出来ませんね」
「全くだよ。最初の卓の三人は上物の風俗嬢になれそうだったな」
「うちに嵌まればそのうち堕とせますよ」
「そうだな」
愛海は衝撃的な会話を聞いて、扉を静かに閉めた。急いで卓に戻るとケンが下品なトークで場を盛り上げていた。
「で、同級生のその子のあだ名はバタコさんになったんですよ」
「バタコさんうちの学校にもいた」
「いたいた」
静香も遼子もかなり出来上がっている。まずいなと思った。
「ケン、会計して。もう帰るわ」
「えっ、もう帰っちゃうんですか」
ケンが聞く。
「ええ、だいぶ酔いが回ってきてるみたいだし、そろそろ帰ります」
愛海はそれっぽいことを言う。
「あっ、はい。わかりました」
ケンはすぐに去って行く。
「ええーもう帰っちゃうの」
「まだ飲み足りないよー」
静香と遼子が抗議する。
「ごめんね、私終電だから帰らないと」
「ええーもうそんな時間」
「ってまだ九時だよ愛海。一緒に飲もうよ」
酔っ払ってても時間はまだ把握しているらしい。愛海はちょっと厄介だと思った。
「だーめ。また今度ね。二人とも酔いすぎだよ」
そう言って、愛海は二人を連れて出ていった。
「いい。ホストに嵌まるのは良くないよ。風俗に堕とされちゃうよ」
外に出て、暫くしたところでそう言った。
「えっ、愛海が行きたいって言い出したんじゃん」
「そうだそうだー」
「事情が変わったの。もう行っちゃダメだよ」
そう釘を刺して愛海は二人と別れていった。
どうやらホストはダメだった。となると、次はどこか。
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