第15話 素晴らしき愛をもう一度 最初のデート2

「ふっへっへっへ。お前を食べてくれる」


 怪人らしき人が女の人を襲っている。


「キャー助けてー」


 襲われている女の人が助けを呼んだ。と、青年の目がその女性に引かれる。


「あれ、あれは」


 どこかで見たことある女性だった。


「ぐわーぉ」


 と、怪人が遂に女の人を食べてしまう。とその瞬間


「「「「そこまでだ」」」」


 ヒーローの声がした。


「なんだなんだ」


「「「「とうっ」」」」

「愛と平和の使者ミネラルレッド」


 赤いスーツのヒーローが音楽と共に出てきてポーズを決める。


「明るい未来を守るミネラルピンク」


 今度はピンクだ。


「地球を守る青い稲妻ミネラルレッドリンク」


 そして赤。


「新緑の浄化ミネラルピンク」


 ピンク・・・・・・。

 そして、音楽だけが少し流れる。


「出てこんのかい」


 怪人が突っ込んだ。


「「「「五人揃ってミネラル戦隊、ウオーター」」」」


 四人がそう叫ぶと、爆発音が聞こえてきた。


「悪しき怪人め、成敗してくれる、覚悟」


 最初に出てきた赤色がそう言った。


「ちょっと待て、ちょっと待て。ちょっとお前らそこに並べ」


 と、怪人が業を煮やして、戦隊達に指図する。


「ええーい、怪人め、問答無用、成敗してくれルンバ」


 二人目の赤色が怪人目掛けて攻撃を仕掛けた。


「あれっ、あれってもしかして」


 と、美佐雄は彼の語尾に気が止まる。


「ルンバじゃない、並べ」


 二人目の赤は一蹴され、並ばされる。


「何よ」


 一人目のピンクが抗議した。


「何よ、じゃないだろ、おかしいだろ」

「何がおかしいのよ。おかしいのは貴方よ」


 二人目のピンクだ。


「そうよ、このエロガッパ」


 一人目のピンクが挑発する。


「うるさいこの、美人なのにモテない女」


 怪人が言い返すと一人目のピンクがしゅんとする。


「悪しき怪人め、成敗してくれる、覚悟」


 その様子を見て、今度は一人目の赤色が攻撃する。


「話は終わってない」


 しかしやはり一蹴された。


「いいか、お前ら。どこから突っ込めばいいかわからんが、とりあえず順番に言うと。まずなんで二色しか無いんだ」


 至極真っ当な突っ込みをする怪人。


「それは、やっぱりみんな男ならレッドが良いからだ。良い身体」


 二人目の赤色がそう言った。


「女の子はやっぱりピンクよね」


 二人目のピンクも便乗する。


「よねじゃない、よねじゃ。それじゃわからないだろ子ども達に」


 怪人は正しいことを言う。


「どういうことだ」


 子どもを引き合いに出されたからか、一人目のレッドが真面目に聞く。


「だから赤とピンクが二色ずつしかなかったらどっちがどっちだかわからんだろ」


 クリーンヒットだ。


「なるほど、ほどほどにとぼとぼ」


 そう言いながら二人目の赤色がとぼとぼする。


「なるほど、ほどほどにとぼとぼじゃない。わかれそれくらい。ってかなんだお前は。さっきからしょーもないだじゃれを語尾につけとってからに」


 怪人は勢いに乗ってドンドン突っ込む。


「これは癖だクルセイダー」


 二人目の赤色が胸を張って抗議する。


「うっとうしいからお前は黙っとけ」


 二人目の赤色は納得がいかないのか直ぐに抗議を続けようとする、が


「黙っとけ」


 怪人に一蹴されてしまう。


「悪しき怪人め、懲らしめてくれる、覚悟」


 その様子を見て、一人目の赤色がまた攻撃する。


「まだ終わってない」


 しかしやはり一蹴される。


「お前ら今何人だ」

「四人よ」


 一人目のピンクが堂々と答えた。


「全員揃った時の決め台詞言ってみろ」


 怪人が半ば呆れたようにそう指示する。


「「「「五人揃ってミネラル戦隊、ウオーター」」」」


 四人がそう言うと、また爆発音が聞こえてきた。


「そうだな、そう言ってたな。もう一度人数聞いていいか」

「四人よ」


 今度は二人目のピンクが答える。


「おかしいだろ。なんで五人いないのに、五人揃ってなんだ」


 怪人は正しいことを言う。


「それはその――、大人の事情っていうか」


 一人目の赤色がもじもじと答える。


「大人の事情じゃないだろ。四人しかいないんだったら、四人って言えばいいだろ」

「そんなこと言っても五人の方がキリがいいし」


 一人目の赤色は抗議した。


「何がキリがいいしだ。ならちゃんと五人揃えろ」


 怪人の突っ込みはキレキレだ。


「わかりました。じゃあこうしましょ。次はちゃんと五人揃えます。後、色でしたっけ。それもなんとか別の色にします。それでいいですか」


 妥協案とばかりに一人目の赤色がそう言った。


「ああ、それでいい」


 怪人はひどく満足そうだ。


「そしたら次はちゃんと戦ってください」


 一人目のピンクが言う。


「戦わないと商売あがったりなんです」


 こちらは二人目のピンクだ。


「わかった。ちゃんとやってくれるなら戦ってやる」


 怪人は偉そうにそう言った。


「それまでは誰も襲ってはダメだゾーンディフェンス」


 二人目の赤色がしゃべり始める。


「お前はあと、その語尾直せ」


 怪人は二人目の赤色の頭を叩いた。


「じゃあ、私達はこの辺で」


 一人目のレッドがそう言うと、戦隊達は去って行った。


「ふふふっ、このショー面白いね」


 くるくるっと笑う美樹はとても可愛かった。だが、青年の心はもう一つのことに傾いていた。


「やっぱりあれは達彦だ」

「えっ、達彦。知り合い」


 美樹としては初めて聞く単語だ。


「うん、高校の時の同級生だと思う。たぶん最初に襲われてたのも愛海っていう同級生だったと思う」


 まさかとは思うが、そんな気がしてならないのだった。


「へぇー、奇遇だね。裏に入ってみようよ」


 と、美樹がとてつもなくアッグレッシブなことを言う。


「えっ、そんないいよ。急に押し掛けちゃまずいでしよ」


 青年は道徳的なことを気にしている。


「大丈夫だよ。知り合いが二人もいるんでしょ」


 しかし美樹は好奇心旺盛だった。


「うん、まあ、そうだけど、ってちょっと」

「ごめんくださーい。達彦くんと愛海さんっていますか」


 青年が止めるのも聞かずに美樹は二人の名前を呼んでみた。


「呼ばれて飛び出て私は愛海。世界のヒロイン愛海よー。誰かしら、私のファン」


 愛海らしい元気の良い声が聞こえてくる。


「呼ばれて飛び出て僕は達彦。今はヒーローやってルンバ」


 達彦もテンション高めで出てきた。


「達彦、あいちゃん久しぶり」


 青年は久方ぶりの再会に感激する。


「みーちゃん」

「美佐雄ーマイガー」


 二人も久方ぶりに再会に驚きを隠せない。


「相変わらずだね、二人とも」

「みーちゃんも、ってなんでここにいるの」

「いやーちょっとデートで」


 青年がはにかんだ。


「デート」


 愛海はそう呟いて青年の隣にいる女性、美樹を見つめた。


「デートデザートデザイナーっと」

「うん」

「初めまして、美樹って言います。さっきのショー面白かったです」


 美樹は丁寧に自己紹介をした。


「へぇー、新しい彼女出来たんだ」


 愛海は少し気に食わないといった様子である。


「おめでとうならお耳ではたち」


 達彦は気にしてないようだ。


「まだ、付き合ってる訳じゃないけど」


 えへへと青年が片手で頭を掻く。


「そうなんですか」

「えっ」


 青年はびっくりする。


「ふふっ、私は付き合ってるつもりでした」

「えっ」


 そして、絶句気味に驚愕した。


「ふーん、そんな感じなんだ」


 愛海が面白くなさそうに言葉を挟む。


「ラブラブラブライブ」


 対照的に達彦はニヤニヤしている。


「私達も付き合ってるのよ、今」


 そう言って愛海は達彦を引き寄せた。


「えっ、本当。えっ、本当に。本当なの」


 青年は驚きの三段活用をした。


「本当だヨーヨー」


 幸せそうに達彦がギャグを言う。


「あいちゃんあんなに嫌がってたのに」


 そう、愛海は達彦のことをかなり嫌っていた。


「ま、まあね。でもほら今はヒーローだから」

「地球を守る青い稲妻ミネラルレッドリンク」


 ノリノリで達彦がポーズを決める。


「うん、そうだね。面白かったよ」


 青年も嬉しそうだ。


「レッドじゃなきゃ別れるけど」


 愛海はどこか面白くなさそうにそう言う。


「ええっ。そうなの花」


 達彦は一転不安な様子になる。


「語尾嫌いだし」


 愛海がスパッと言い放った。


「ガーンこ親父」


 達彦が項垂れる。


「あはははは、やっぱり相変わらずだね。達彦大丈夫だよ。あいちゃんも本気じゃないと思うから」


 青年がフォローした。すると、達彦はその言葉に縋りつくように元気を取り戻す。


「私は本気よ」


 しかしすぐに奈落に突き落とされてしまった。


「ねえねえ、ちょっと」


 と、ここで美樹が青年を呼び出す。


「んっ、何」

「もしかして、さっき言ってた元カノ」


 そう言えば、そういう紹介をしていなかったなって思う青年。


「ああー、うんそうだよ」

「なるほどね」


 美樹は何かに納得したようだった。


「僕は君を愛してルンバ」


 達彦が言いながら花を差し出す。


「語尾やめて、気持ち悪い」


 しかし愛海は受け取らなかった。


「ガーンこ親父」


 達彦は再び項垂れた。


「でも二人とも元気そうで良かったよ」


 青年はそんな二人を見て安心している。


「みーちゃんもね」


 愛海が機嫌良くそう言った。


「じゃあ僕らはここで」


 あまり長居するのも悪いと思った青年は後を去ることにする。


「うん、じゃあね、姉さん女房」

「さようなら」


 美樹も挨拶をする。が、愛海はしなかった。


「さよ、おなら」


 代わりのごとく達彦がギャグを飛ばした。

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