第96食 行列のできるカレー店:洋食膳 海カレーTAKEUCHI神保町本店(B20)

 この日、早めに昼休憩に入った書き手は、急ぎ、「海カレーTAKEUCHI」に向かった。

 これまで何度もこの店の前を通りかかってきたのだが、そのたびに書き手が目にしてきたのは、カレー枯れ故の〈閉店〉の掲示であった。

 要するに、早めに行かねば、この店への入店は叶わないのだ。

 そういった次第で、運よく、神保町で仕事をしていた書き手は、TAKEUCHIさんに開店凸すべく、オープン時刻ちょうどに店に到着できるように、昼休憩の時間を調整した次第なのである。


 だが、まったくもって甘かった。


 予定通りに、開店時刻の少し前に到着できたものの、既に店の前には長蛇の列ができていたのだ。


 そんなかんなで、書き手が入店できたのは、列に入ってから三十分後の事であった。

 また、十数席のカウンター店で、丁寧な調理が為されている、という事もあり、注文品が提供されたのは、さらに十五分後の事であった。


 つまり、店到着から料理の提供までが約四十五分、これに、移動と食事の時間を加えると、通常の昼休憩の一時間では、とてもじゃないが時間が足りない。だから、TAKEUCHIさんでカレーを食さんと欲するのならば、それなりの時間的調整が必要となろう。


 とまれかくまれ、待ち時間に、書き手が注文する事にしたのは、「煮込みハンバーグ膳」であった。

 この「煮込みハンバーグ膳」には、デミグラスソースとカレーソースの二種類があるのだが、書き手が注文したのは、もちろんカレーソースの方である。


 やがて、入店から四分の一時間後、注文した品が、長方形の木製のトレイに載せられて提供された。

 そのお盆の上には、椀に山盛りに盛られた黄色いライス、豚汁、そして黒い鉄板の上では、ジュージューと音を立てながらハンバーグが焼かれていた。

 そのハンバーグの上には、これでもか、とばかりに、様々な野菜がスタイリッシュに盛り付けられていた。

 当世風に言うと、〈ばえる〉ってやつだ。

 実は、このハンバーグ膳の凝った盛り付け方は、日によって異なるらしく、来店のたびに、どのような形状になっているのかも興味深い点であろう。

 

 なるほど、この〈ばえる〉盛り付けも、TAKEUCHIさんが、行列のできるカレー店になっている、その所以なのかもしれない。


 そして—―

 書き手の耳には、他客のほとんどが、ハンバーグ膳を注文する声が届いていたのであった。


〈訪問データ〉

 洋食膳 海カレーTAKEUCHI神保町本店;神保町・神保町

 B20

 十一月二十四日・木・十二時十五分

 煮込みハンバーグカレー膳:九五〇円(現金)


〈参考資料〉

 「洋食膳 海カレーTAKEUCHI神保町本店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、七十二ページ。

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