第069食 和咖哩飯の食し方:くずしわしょく香季庵 日本橋店(C10)

 毎週月曜の昼時に、書き手は田園都市線・半蔵門線を利用するので、空間戦略面から考えると、この曜日の昼時に訪れるカレー店は、半蔵門線沿線の駅からアクセスし易い店という事になる。

 こういった観点から、東京メトロの半蔵門線の三越駅を降りた書き手は、中央通りの左の歩道をとって、徒歩で神田駅方面に向かったのであった。

 中央通りと、その大通りに接している細道の角に位置している雑居ビルの地下一階に在るのが、この日の書き手の目当ての店、〈個室居酒屋 くずしわしょく香季庵〉の日本橋店であった。

 ちなみに、この〈くずしわしょく香季庵〉の姉妹店は銀座にあるそうだ。


 この店は〈個室居酒屋〉で、すなわち、飲み屋なのだが、昼営業も行っており、カレーライスというか、メニューの中に咖哩飯もあるのだ。

 店のホームページによると、夕食時間帯と昼食時間帯のの咖哩飯の値段には、五〇〇円の差があるので、書き手は、お安く咖哩を食せる、昼時に店を訪れた次第なのである。

 ちなみに、昼の時間帯のランチメニューたる咖哩飯セットの内容は、「カレー、サラダ、ご飯、味噌汁、お新香」というシンプルなものであるのに対して、夜の個室居酒屋の時間帯に関しては、献立から自分で選ぶアラカルト形式で、夜は、昼のセットメニューの内容に、「豆乳の冷たい茶碗蒸し」が付くそうだ。つまり、昼夜の違いだけではなく、この茶碗蒸しが、値段の差となって表われているのかもしれない。


 また、この店名に「わしょく」という名称が入っているように、〈くずしわしょく香季庵〉は、日本橋、室町という街に相応しい瀟洒な雰囲気に合っており、「四季の食材をふんだんに使用した」料理をウリにしている和食店で、さらに、地下にある事から、隠れ家的な印象もあるようだ。

 これに加え、本来は洋食であるカレーを和食店で提供している、という意外性もあって、この店の「自家製 香季庵辛カレー」は、「隠れた逸品」たる「やみつきになる和カレー」になっているそうなのだ。


 店の紹介ページによると、この和カレーは、「煮干しと削りカツオの出汁、10種類以上の根菜をゆっくり煮詰め」、さらに、胡麻や柚子の風味が加わっているようで、こういった和食の要素が、この店の名称が入っている「香季庵辛カレー」を〈和カレー〉たらしめているのであろう。


 このような和の食材をふんだんに使っているのに、ランチタイムとはいえ、千円以下なのは安すぎないか(現在は千円)、と思っていた書き手であったのだが、咖哩汁が入った器こそ、店の給仕が提供してくれたのだが、飯や味噌汁、そして野菜に関しては、自分で器に装う形式になっているので、このように人件費がかからない分、料理の値段がお安くなっているのかもしれない。


 かくして書き手の目の前にある、咖哩と飯は一皿に盛られた物ではなく、咖哩汁と米飯が別容器になっている。それゆえに、食べ方としては、米に少しずつ咖哩汁を掛けながら口に運ぶのが標準なのかもしれないが、ここまでの七十件近いカレー経験によって、汁気の多いカレーの場合、そのカレーの容器に米飯を入れて、追い飯風にして食べた方が、米に染み込んだ汁をほとんど全て味わいつくす事ができる、と書き手は考えるに至ったのである。ちなみに、この店では、ご飯がお代わり自由なので、容器に残っている汁が完全になくなるまでご飯を追加する事が可能なのだ。

 とまれかくまれ、汁気の多いカレーには追い飯、これが、ここまでのカレー経験によって獲得した、書き手なりの味わい方なのである。


〈訪問データ〉

 くずしわしょく香季庵 日本橋店:神田・神田駅南口

 C10

 十月三十一日・月曜日・十三時半

 香季庵辛カレー:九五〇円(現金)


〈参考資料〉

 「くずしわしょく香季庵 日本橋店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十九ページ。

〈WEB〉

 「くずしわしょく香季庵 日本橋店」、『香季庵』、二〇二三年一月二十二日閲覧。

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