第068食 外縁の虎は小麦を食べぬ:ティグレ(E08)
秋葉原駅で降りたって、中央通りに出てから、その右側の歩道をとって、上野方面に向かって進み、蔵前橋通りを渡ってから、マクドナルドが角にある細道を右折すると、そこに一軒のバーがある。
それが、この日の昼の書き手の目的の店、〈Dining Bar Tigre(ティグレ)〉であった。
例えばもし、地図で神田カレー街を縁取った場合、この店は、秋葉原エリアの最も外側に位置している、と考えられよう。
このティグレは、基本、お酒を楽しめるバーなのだが、ガイドブックによると、〈BARで食べられる本格スパイスカレー!〉が売り文句になっており、さらに、「夜はお酒とのペアリングもお楽しみ下さい」との追記もあった。
ティグレは、夜だけではなくランチタイムにも、店主のママさんがワンオペで営業しているので、書き手は、その昼営業の時間帯に、カレー・ガイドブックを片手に、開店凸をしたのであった。
開店直後の訪店という事もあってか、書き手は、バーのママさんとしばし話をする機会があったのだが、ティグレは、神田カレー街のエリアの中でも最外縁部に位置している店の一つなので、ママさんによると、スタンプラリーをクリアする上で訪問し難い店のように感じているスタンプラリー参加者もいる、との事であった。
実は、書き手は、今年がスタンプ・ラリー初参加だったのだが、ティグレさんも今年が初参加らしく、そういった話題でも、ママさんと話が弾んだ。
書き手が注文したのは、スパイシーキーマカレーであった。
ガイドブックによると、この店のカレーーは、玉ねぎとトマトを炒め、ホールスパイスをふんだんに使い、独自のマサラで作っているらしい。
さらに、〈グルテンフリー〉な「体に優しい元気の出るスパイスカレー」との事であった。
簡単に言うと、グルテンフリーのカレーとは、小麦粉を使っていない品だ。
小麦粉に水を加えて捏ねると、〈グルテニン〉と〈グリアジン〉が絡み合って、〈グルテン〉になるのだが、グルテンには、食品をふっくらさせ、弾力を持たせる性質があるその一方で、グルテンを必要以上に摂取しない、〈グルテンフリー〉な食事をすると、体調が良くなったり、肌荒れが少なくなったといった報告もあるそうで、このように体質や肌質の改善が見込めるという理由から、最近のヘルシー志向の人達の間で、この〈グルテンフリー〉は注目されており、すなわち、〈グルテンフリー〉は、ヘルシー食品を表わすキーワードの一つになっているようだ。
そういえば、少し前に神田で入った女性店主のカレー店でも、〈グルテンフリー〉をウリにしていた、と書き手は記憶しているのだが、このお肌に良い〈グルテンフリー〉は、健康志向の女性客をキャッチする上での、アクチュアルなパワーワードなのかもしれない。
注文後、ママさんはキッチンに入ってしまったので、書き手はしばらくカウンターで独り待つ事になったのだが、待ち時間の間に気になったのは、ティッシュの箱の絵が〈虎〉であった点である。
書き手は、大学時代にフランス語を履修していたのだが、虎を意味する〈ティーグル(tigre)〉という仏単語を知っていたので、黄色いキーマカレーが運ばれてきた時に、ママさんに〈ティグレ〉という店名が、はたして虎由来かどうか尋ねてみたところ、やはり、この店名〈ティグレ〉は、虎を意味するスペイン語から採ったそうである。
店名の由来を知って書き手が抱いたのは、エリア外縁部のティグレは小麦を食わない虎なのかもしれないな、という事であった。
〈訪問データ〉
Dining Bar Tigre(ティグレ):秋葉原・御徒町
E08
十月二十八日・金曜日・十一時半
スパイシーキーマカレー:一〇〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「Dining Bar Tigre」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、六十四ページ。
〈WEB〉
『Tigre(ティグレ)』、二〇二三年一月二十日閲覧。
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