第055話 塩ブタをプロデュース:鉄板居酒屋BelonBelonBooとBarボンド(E05)
火曜の夜に書き手が赴いたのは、上野方面に向かって、秋葉原の蔵前橋通りを渡ってすぐ、中央通りの右の仲御徒町エリアにある〈鉄板居酒屋BelonBelonBoo(ベロンベロンブー)とBarボンド〉であった。
この店は、今回の「神田カレー街スタンプラリー」に参加している店の多くが千代田区に在るのに対して、数少ない台東区所在の店である。
そして、この店には、さらなる独自性があって、数少ない深夜営業の店であり、しかも、このベロンベロンブーは、その店名に「鉄板居酒屋」とあるように、飲み屋さんで、その営業時間は十八時半から午前五時、つまり、状況によっては深夜の訪店も可能なのだ。
この居酒屋では、素材や味にこだわっており、この店の名にある鉄板焼きを中心とした「50種類以上」の様々な料理を提供しているそうなのだ。
そしてカレー・メニューに関しては、二〇二二年秋冬の時点で、「焼きカレードリア」(一一〇〇円)以外に、「じっくり炒めた玉ねぎとトマトの」オリジナルのスパイスカレーがあって、それらは、「トマトと玉ねぎのスパイシーミニカレー」(五五〇円)、「トマトと玉ねぎのスパイシーカレー」(八八〇円)、「トマトと玉ねぎのスパイシー塩豚カレー」(一一〇〇円)であった。このスパイシーカレー、出世魚であるアジの如きラインナップになっているように書き手には思われた。
コスパ的にはミニカレーがお安いのは確かなのだが、書き手は、ガイドブックに掲載されていた写真を見た時に、白米の上に乗っていた、圧倒的な存在感を示しているトッピングが気になっていた。
写真の中のそれは、色白く焦げ目が入って、アジかサバのように思われた。
とまれ、ガイドブックには、その存在感溢れる物が何かまでは書かれてはいなかったのだが、訪店してようやく、書き手は、実はそれが、魚ではなく〈塩豚〉である事を知ったのである。
塩豚だとっ!
知らなければ、書き手は、稚魚のようなミニカレーを注文して、その後、どこか近隣のカレー提供店をハシゴしていたにちがいない。
だが、書き手は知ってしまったのだ。
そして、おそらく、成魚の如き「塩豚カレー」を注文しなければ、白米の頂上に在るトッピングは食せまい。
結果として、書き手は「トマトと玉ねぎのスパイシー塩豚カレー」を注文したのである。
鉄板で塩豚を焼いているからなのか、注文から料理の提供までは十分ほどかかったのだが、やがて、緑の皿がテーブルという舞台に登場した。
その緑の皿の縁を、バックダンサーのような、皿とは濃度が異なる緑の野菜が彩り、さらに、トマトカレーが皿の大半を占め、カレーの湖の中に、花道の如く白米が置かれていた。その白米の上で存在感を誇っているのは、赤みが強い数枚の〈塩豚〉であった。
かくの如く、塩豚はプロデュースされていたのである。
やはり、頂上の塩豚は一番最後に、と、書き手は、スパイシートマトカレーをある程度、食べ進めてから、まずは、塩豚を単体で食し、それから、塩豚カレーとしても味わった。
この塩豚だけでも、ベロンベロンブーに来た意義はある。それほど、塩味が効いたこの赤きトッピングは美味だったのだ。
仲御徒町のベロンベロンブーは、鉄板居酒屋で、かつ朝までやっている店なので、夜にアキバに行った時に、ちょっと立ち寄って、お肉や魚介の鉄板焼きで一杯やるのも悪くない、悪くない気がする、そう思った書き手であった。
〈訪問データ〉
鉄板居酒屋BelonBelonBooとBarボンド;末広町・御徒町
E05
十月十八日・火曜日・二十時
トマトと玉ねぎのスパイシー塩豚カレー:一一〇〇円(現金)
〈参考資料〉
「鉄板居酒屋BelonBelonBooとBarボンド」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、六十五ページ。
〈WEB〉
「ホーム」「お品書き」、『鉄板居酒屋BelonBelonBooとBarボンド』、二〇二二年十二月二十九日閲覧。
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