第054食 カレー味のホルモンにモンモン:MONMOM(C05)

 既に話に出したように、秋の火曜日の書き手は、昼時に、出先に向かうために、九段下駅で、東西線から半蔵門線に乗り換えざるを得ない状況にある。だから、この日も、書き手は九段下で東西線から下車したのだが、しかし、出口として使ったのは六番出口であった。


 階段を上がってから、武道館側を背にして、神保町方面に向かってしばし歩き、内堀通りを渡り、首都高の下を潜り抜け、そして、神保町駅に至る前に、靖国通りの右側に位置しているのが、十勝ハーブ牛のホルモン焼きを扱っている〈MONMOM(モンモン)〉である。


 この店は、北海道・東部の十勝(とかち)の生産者が直営しているホルモン焼き肉店で、一階がホルモン鉄板焼き、二階がホルモン焼き肉店になっており、扱っているのは、オリジナル・ブランドの〈十勝ハーブ牛〉なのだ。


 MONMOMでは、ランチタイムとディナータイムで価格が異なるのだが、書き手が訪れた昼時には、「北海道産牛100% 鉄板焼きハンバーグ定食」が一二〇〇円、「北海道産牛 鉄板焼きステーキ定食(150g)」が一六〇〇円と、ブランド牛を扱っている店としては、ちょっと考えられないような値段で、料理が提供されていた。とまれ、この安さこそが、直営店が為せる技なのかもしれない。


 このMONMOMが、「神田カレーグランプリ」と「神田カレー街食べ歩きスタンプラリー」の時期だけに提供しているメニューが、「牛ホルモンカレー」、一二〇〇円である。ちなみに、カレー関連メニューはこれだけだ。

 店の前のメニュー・プレートには、カレーには「十勝ハーブ牛のホルモンがごろごろ入った」という形容句が付いていた。

 さらに、ライスの大盛は無料ともあったので、書き手は、もちろん、ごはんを大盛りにし、「牛ホルモンカレー」を注文したのであった。


 注文後、食材であるホルモンが鉄板で焼かれ出した。

 そして例のごとく、提供までの間、この店で扱っている、耳慣れない〈十勝ハーブ牛〉について、書き手は調べてみることにした。


 十勝ハーブ牛とは、「黒毛和牛とホルスタインから生まれた国産牛」で、北海道の十勝の大自然の中で育てられているそうだ。

 この十勝の牛が「ハーブ」と形容されているのは、牛の成長に合わせて、様々なハーブを与えているかららしい。

 十勝ハーブ牛のホームぺージによると、その主たるハーブとは、「アニス、シナモン、セロリ、チョウジ、ジンジャー、ミント、タイム、オレガノ、ラベンダー、ガーリック、トウガラシ、ローズマリー、月桂樹」などだそうだ。

 しかし、どうしてエサに数多のハーブを? と書き手は疑問を抱いたのだが、その答えも、サイトには示されていた。

 複数のハーブをエサに混ぜると、「牛の消化力や免疫力が高ま」るかららしい。結果、牛は沢山のエサを食べ、健康的に育ち、臭みのないきめ細かい肉になる、との事であった。

 なるほど、それが故の〈ハーブ〉なのか。


 やがて、黒く四角い皿の上に載せられた、青唐漬けと、大盛りのライス、そして、ホルモン焼きが提供された。


 実は、書き手は、店に来る前は、このホルモン鉄板焼き屋のカレーは、カレー・ソースに具材としてホルモンを入れた、オーソドックスなカレーを想像していたのだが、店の前に置かれていたメニュー・パネルにあった料理の写真によって、それは、全くの勘違いで、ホルモンの鉄板焼きをカレー味にしたものが、この店の「牛ホルモンカレー」である事を知ったのだった。


 中には、これがカレーなのか? と思う人もいるかもしれないが、そもそも、カレーとは、複数の種類の香辛料を使って食材に味付けをする料理の事であり、つまるところ、香辛料を使ってさえいれば何だってカレーで、カレーは実に自由な料理なのである。

 とまれ、なるほど、この調理法ならば、カレーの一具材としてのホルモンではなく、カレー味のホルモン焼きとして、十勝ハーブ牛を食す事になり、結果、より一層、十勝ハーブ牛それ自体を味わえる分けなのだ。


 そして、コリコリと弾力のあるカレー味のホルモンをおかずに、大盛りにしたごはんを平らげ、書き手は大満足のうちに店を後にした。


 たしかに、ホルモン鉄板焼きの店のランチ・メニューのメインであるハンバーグやステーキも魅力的なのだが、実は、この〈牛ホルモンカレー〉はイヴェントだけの限定メニューなので、原則、この時期にしか食べられないレア・メニューなのだ。


 事実、十二月の末にワンチャンあるかも、と思って店を訪れた時には、〈牛ホルモンカレー〉は、店前のメニュー・パネルから消えていた。

 したがって、次にこのカレー味のホルモンを食べられるのは、次のスタンプ・ラリーの開催を待たねばならない。


 それまで、書き手は、モンモンとした日々を過ごす事になりそうである。


〈訪問データ〉

 MONMOM;九段下・神保町

 C05

 十月十八日・火曜日・十三時

 十勝ハーブ牛ホルモンカレー・青唐漬け添え:一二〇〇円(QR)


〈参考資料〉

 「MONMOM」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、七十一ページ。

 〈WEB〉

 「ホーム」「十勝ハーブ牛とは」、『十勝ハーブ牛ブランドサイト』、二〇二二年十二月二十八日閲覧。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る