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(あらすじ:水の中で気を失った宮部の見た夢)
*
水の中で息がつづかなくなり、意識を失いかけたとき、宮部は夢を見た。
バケツをひっくり返したような豪雨の中に彼は立っていた。全身が濡れて、水を吸った服が重く、苦しかった。
すぐ隣には川が流れていて、その先には滝があった――というか、つづいているはずの大地がそこにはなく、断絶していて、そこに流れてきた水が落ちていっていただけだった。崖だった。
水が消えているあたりの岸に、影が二つ立っていた。雨が煙って姿がはっきりしないが、一方が一方に後ろから組み付いている。判然としないが、宮部はそれが何であるかすぐに悟った。
「おい、やめろ」と宮部は影に向かって言った。
影は二つとも寄り添ったままじわじわと背後に退いていく。
「おい、やめろ!」
宮部はもう一度叫び、手を前に突き出した。しかしその手には何も握られていない。
影は崖のすれすれのところで止まった。宮部は自分の足が上手く動かないことに苛立っている。
雨がより激しくなった。二つの影が地面から立ち上る靄のようなものに消えてしまいそうなくらい薄れていった。
そのとき、影がもう一方の影を押しのけて、崖へと突き落とした。その影は崖の下へと消え、それと同時に突き落した方の影は煙となって空に立ち昇っていった。
やがて、そこには何も残っておらず滝の音だけがごうごうと聞こえてくるのに、宮部は気付いた。
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