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(あらすじ:宮部が目覚める)
*
宮部は滝つぼの横にあった大きな岩の上で目を覚ました。鼻腔の中に溜まっていた水を勢いよく吹きだして、ひどくむせた。
「あっ生きてた!」と宮部の顔をのぞきこんだ三枝が言った。
三枝の隣には絵瑠と栄治もいる。
「お前らなあ」と宮部が言う。「札を取れとは言ったが、ここまでしろとは言ってないぞ」
「栄治はんの発案です」
「お前かよ。イチワが水の中に入れないこと、大気より密度の高い物質があるときそこには結界が張れないこととか、よく気づいたと思ってたんだけどな」
「それは僕も指摘しました。だからこそ栄治はんの案を採用したんです」
「だが滝つぼまでの誘導は少しわざとらしかった。ほかにもやり方はあったろうが」
「じゃあわざと引っ掛かったんですか」
「さあな。……だが絵瑠、俺が光の魔法は使うなって言ったのに、普通に使ってたな」
「はい。でも別に構わないですよね」と絵瑠は毅然として言った。
「ああ、そうだ。俺がやるなって言ったことは、大抵やってもいい。俺がやれって言ったことは絶対にやれ」と宮部は言う。「で、俺の札はどこだ」
「気持ち悪いんで、誰も取り出してないですよ」
「おいおい、それじゃあ合格はやれねえよ」
「正直言って、普通に引きました」と絵瑠。
「逆にお前は自分の下着の中まさぐられたいのかよ」
などと二人が立てつづけに文句を言うと、やっと折れたのか、宮部が体を起こしながら言った。
「まあいい。合格だよ。二人とも、いや、三人とも、か」
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