なんと全人類は酸素を吸っていた!

砂漠の使徒

20XX/12/9

 俺の名前なんてどうでもいい。

 今目の前で世界は滅びた。

 具体的に言うと、酸素濃度が急激に低下した。

 なぜそんなことがわかるかって?

 それは俺がとある観測所の研究員だからだ。

 異変を感じ取った俺は酸素ボンベと共に地下シェルターに逃げ込んだ。

 だが、しょせん悪あがき。

 このボンベの中身が俺の寿命だ。

 それが尽きる前に、記録を残す。

 なぜこんなことが突然起きたのか、理由は知らん。

 人知を超えた力が働いて……ん?

 声が聞こえる。

 この真上で、誰かが話しているな。


――――――――――――――――――――


「で、どうしてこんなに死体がゴロゴロ転がっているのだ?」


「閣下、それは酸素濃度を低下させたからです」


「なぜそんなことをする必要があった」


「我々の調査では、この星を支配している人間という種族が大変危険だということがわかりました。同じ種族同士で平気で殺し合いなどの、極悪非道な行いをやってのけるのです」


「ふむ」


「そして、この人類の多くは酸素を吸っていることが明らかになりました」


「珍しいな、酸素があるなんて」


「はい。ですので、諸悪の根源である酸素を断てば、この地球には善良な種族しか残らないでしょう」


「あー、ちなみに辺りが焦げ臭いのはなぜだ」


「ああ、それは酸素を生み出す光合成という活動を行っている植物もついでに焼却処分したからです」


「なるほど、ご苦労だった」


「結果として、人間のみならず邪魔になる種族は全て滅ぼせました」


「それで、残ったのはこいつか」


「はい、人類が呼ぶところの「AI」です。これといって敵意はなく、生命活動のために酸素も使用しません」


「これからよろしくな、旧時代の地球の支配者よ」


「ハイ、ヨロシクオネガイシマス」


――――――――――――――――――――


 なんてこったい。

 俺は頭を抱えた。

 酸素不足のためか、頭痛がするぜ。

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