第二次ソロモン海戦
第47話 危急のガダルカナル
英海軍の新鋭戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」ならびに巡洋戦艦「レパルス」との砲撃戦で中破した戦艦「大和」、それに損傷した一部の巡洋艦と駆逐艦を先に本土へと戻し、第三艦隊は残る戦力でインド洋制圧作戦を続行した。
英国にとっての要地や要衝であるコロンボやトリンコマリーを空襲し、さらに増援として送り込まれてきた他の部隊とともに通商破壊戦を実施した。
一連の作戦を終了して第三艦隊が本土へと戻った時には七月も半ばを過ぎていた。
長期間にわたる作戦行動で疲労の極にある将兵らに休暇を与え、さらに艦艇の整備が進みゆくなか、しかしガダルカナル島が敵の攻撃を受けているという一報が入ってくる。
八月七日午前四時、米海兵隊が突如としてガダルカナル島に上陸を開始したというのだ。
ガダルカナル島の日本軍は完全に虚を突かれた。
そのうえ、同地に展開している戦力も僅少だったことで完成目前だった飛行場はあっさりと連合国軍に奪取されてしまう。
もちろん、南方戦域の日本軍も黙って手をこまねいていようはずもなく、即座に反撃に出ている。
まず、ラバウルに展開する第二五航空戦隊が五〇機あまりの艦戦や艦爆、それに陸攻による攻撃隊をガダルカナル島に差し向けた。
しかし、F4Fワイルドキャット戦闘機の妨害によって大きな戦果を挙げることはかなわず、逆に少なくない損害を被ってしまう。
しかし、一方で敵艦上戦闘機が活動中ということは、つまりは米機動部隊がガダルカナル島近傍海域で行動中であるというなによりの証であり、この上ない貴重な情報だった。
昼間の航空攻撃が不調に終わった現地軍だったが、しかし一方で連合国軍のガダルカナル島襲来に呼応して出撃した水上打撃部隊の第八艦隊が大戦果を挙げる。
旗艦「鳥海」ならびに第六戦隊の「青葉」と「衣笠」それに「古鷹」と「加古」の五隻の重巡を主力とする第八艦隊は優勢な米豪連合艦隊と交戦、砲雷撃で「キャンベラ」と「ヴィンセンス」それに「クインシー 」ならびに「アストリア」の四隻の重巡を撃沈するという快挙を成し遂げた。
ただし、肝心の輸送船団への攻撃は成されず、そのことでガダルカナル島の米軍を追い落とすまでには至らなかった。
ガダルカナル島に対する攻撃が連合国軍による本格的な反攻であることを確信した帝国海軍は帰国してさほど間が無い第三艦隊に出撃準備を命じる。
命令を受けた第三艦隊司令部は作戦参加艦艇の整備を急がせるとともに、休暇中の将兵に緊急招集をかける。
それと並行して戦力の回復あるいは補充も行われる。
主戦力である艦上機隊のほうはインド洋での一連の作戦でかなり消耗していたものの、慣熟訓練中の「龍鳳」ならびに竣工を前に錬成中の「千歳」と「千代田」の航空隊を一時的に召し上げ、さらに基地航空隊に配属されている母艦勤務経験者をかき集めたことで、かろうじてではあるが機材ならびに人材の定数を確保することに成功していた。
第三艦隊
甲部隊
「翔鶴」(零戦三六、九九艦爆一八、九七艦攻一八、一三試艦爆一)
「瑞鶴」(零戦三六、九九艦爆一八、九七艦攻一八、一三試艦爆一)
「飛龍」(零戦三六、九九艦爆九、九七艦攻一二)
重巡「熊野」「鈴谷」「最上」「三隈」
駆逐艦「雪風」「初風」「天津風」「時津風」「浦風」「磯風」「谷風」「浜風」
乙部隊
「隼鷹」(零戦二七、九九艦爆九、九七艦攻一二)
「飛鷹」(零戦二七、九九艦爆九、九七艦攻一二)
「瑞鳳」(零戦二七)
戦艦「長門」「陸奥」
重巡「利根」「筑摩」
軽巡「長良」
駆逐艦「萩風」「舞風」「嵐」「野分」「秋雲」「夕雲」「巻雲」「風雲」
第三艦隊は第一次インド洋海戦で被雷した「飛龍」が復帰し、高速艦で固められた甲部隊に組み込まれている。
就役して間が無く、今回が初陣となる商船改造空母の「飛鷹」は姉妹艦の「隼鷹」がいる乙部隊に編入された。
さらに、第二次インド洋海戦で手傷を負った「大和」の穴を埋めるために四一センチ砲搭載戦艦の「長門」と「陸奥」がこれも乙部隊に臨時編入されている。
空母六隻、戦艦二隻、重巡六隻、軽巡一隻、駆逐艦一六隻からなる第三艦隊は一路南下、ガダルカナル島を目指す。
三度目となる日米機動部隊の激突は必至だった。
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