47.決勝戦その6

 シュートチェックを受けた10番の勢いは止まった。10番の中で何かのリズムが崩れたようだった。


 奏歩は凛のフォローがあったおかげで2クォーター後半に元気を取り戻した。雪遊びに喜ぶ犬のようにコートを走り回る奏歩。まるで10番から生気を吸い取ったかのように見えた。


 崩れたフォームでもスリーポイントに拘る10番。打ってきた。だが外れる。メンタルの面で不安定になるとそれがシュートフォームにも現れるタイプの選手だ。


 リバウンドを取る信子。奏歩は走っていた。信子からの力強いパスが通った。奏歩はレイアップをやすやす決めてきた。


 凛はディフェンスに徹しなければならなかった。それだけ向こうの11番はしぶとい。


 10番のスリーはなくなったが背の高い9番の問題がある。


 信子が頑張ってくれている。凛は出来るだけ、11番が簡単にパスしないように張り付いている必要があった。


 努力はした。やるだけはやった。全力を尽くした。しかしパスが9番へと入る。


 凛の守備は無駄ではなかった。取りにくい位置からボールを引き寄せ、体制を崩したまま信子と1対1になる9番。強めのワンドリブルをするしかなかった。信子に余裕が生まれた。そしてシュート。信子の手がボールに触れた。外れた。


 ぽろり、対角線の逆側へ落ちたボールをリバウンド、雄。


 奏歩がダッシュしている。続けて麻帆も走った。


 雄は先に飛び出していた奏歩へロングパス。敵の10番が奏歩の目の前で飛んだ。奏歩はちゃんと周囲を見渡していた。


 絶妙な位置に麻帆がいた。手渡しパス。麻帆がシュートを決めた。


 ベンチでは飛び上がる村上先生とるみ。歓声を送る第3中の保護者たち。応援の拍手に湧く男子たち。


 ハイタッチして抱き合う麻帆と奏歩。ベンチにむかってガッツポーズをしてみせた。


 まるで第3中の勝利が決まったみたいに会場は湧いた。2クォーターは、また第3中に流れが来たまま終了した。


 凛のナイスディフェンス、信子のファインプレー、雄のナイスリバウンド、奏歩のナイスアシスト、麻帆のナイスシュートと、5人の力が全部合わさって、これで点差は縮まった。48対43。


 第3中は5点差で負けている。どう転ぶかはまだわからない。

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