40.ウィンターカップ。3回戦の2。
第3中学はディフェンスで苦労することになる。第1中学の面々が攻めて来るときフェイクは基本2回だと思ってよかった。1度目のフェイントを読んで、次の動きを止めに入ると2度目もフェイク。あっという間にシュートにいかれ、慌てて追いすがるとファールだった。
フリースローも上手にきめられて失点は3。取り戻すのに苦労する羽目になる。しかしオフェンスで、第3中学は素晴らしい盛り上がりをみせた。
信子と雄が主力選手となった。ペイントエリアでセンターにパスが通ればあとは確実に2点入った。村上先生の言ったとおりだ。
身長差を利用するのは多少卑怯かもしれないが、つべこべ言ってはいられない。勝負の世界は結果がすべてだ。
敵も味方も観客さえも、関係者たちは信子がいまどこにいるのかを常にアンテナをはって見ていた。
村上先生はワクワクするような興奮を覚えていた。あの子たち、なかなかどうして。ここまでずっと愚痴を積み上げてきたわりにはやるべきことをガツンとやるわね。特に凛。人一倍文句を垂れていたあの子。ディフェンスに隙がない。ミニバス経験者相手に負けていない。シャトルランで倒れた時とはもはや別人。奏歩をライバルに認定したのも負けず嫌いが招いたこと。今はチームのためにすごくいい仕事をしてくれる。凛、あなたにはもっともっと期待してるわよ。
綾瀬くんを意識して凛は、心底奏歩からのパスがほしかった。だが奏歩は信子にばかり、回している。シュートが面白いように決まるから当たり前ではあった。
私多分今いい位置にいる。凛はリング下の45度の大得意エリアで唇をかんだ。綾瀬くんの見ている今パスが欲しいったらない。
「凛、ディフェンス!」
信子のショットがきまり、ぼーっとしている凛のお尻を麻帆がはたいた。
ディフェンスは地味だよなあ。凛は思った。足腰にきて疲れるわりに観客には見てもらいづらい。お母さん、あたしがんばってんだよ。ビデオ取ってよね。そして綾瀬くん。少しでも綾瀬くんの視界に入りたい。
試合終了。
信子はよく動き回った。このゲームのMVPとして村上先生は信子を褒めた。
「小さいチームにはけして届かない快挙を達成出来たといっていいでしょう。」
奏歩とのコンビネーションも上々で、2人の息のあったプレーには見どころが満載だった。安定のポストプレー、振り向きざまのシュートが入るシーン。
奏歩がフェイントをいれ信子にパス。信子もワンフェイクいれシュートが届いたシーン。
信子がスリーポイントを沈めたシーン。奏歩のショットが外れたが信子のリバウンドが決まったシーン。
ビデオとスコアブックをつけていたるみが、ダイジェストで活躍をねぎらった。
やはり奏歩、信子ペアには勢いがあった。
綾瀬くんまでが、8番のあの子の名前、何?と聞いてくる始末。
凛はこの試合中、本当にパスが欲しかった。が、3クォーター後半で20点開いてからは、勝ちを確信し、決勝戦まで自分の見せ場がなくても我慢しようと心に決めた。そして地味なディフェンスに徹することにしたのだ。
皆はスコアブックでこの試合の反省をした。
凛はスリーポイント1つと、フリースローをきめていた。凛はフリースローを落とさずオフェンスの波をとめなかった。総得点5。
雄はセンタープレーをがんばった。信子ほどはいかなくても8点を着実にきめた。
麻帆は主に黒子に徹した。リバウンドに絡んで4得点。
信子は乗りに乗って28点。
奏歩は4点。
「なかなかバランスがいいわね。」
村上先生の評価がおりた。
「次はいよいよ決勝戦。山本学園と当たります。各自、体を休めて万全の体制で臨むように。以上今日は解散。お疲れ様でした。」
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