39.ウィンターカップ。3回戦。

 3回戦は数日をおき、三波第1中学とあたる。試合は県立総合体育館という立派な舞台で行われることになっていた。第3中学と第1中学は学区が間近なので同市内の中学生による近隣対決となった。だが第1小学校には第3小学校にないミニバスチームがあり、選手陣の経験値が違った。


 また、サブの控え選手も充実していて二十数名がベンチや応援席にいた。さらに旗までもが古く年季が入っておりバスケの歴史の深さを表す。最後に保護者も勝ちに来ていて、一見しても目の色が違った。


 村上先生はこれまで第3中学が期待通り勝ち進んだことに満足していた。自分の采配についても疑っていなかった。何より、3回戦を応援にきた凛や雄たちの保護者からお礼を言われていたのだった。


「うちの子がこんなにも成長して。」


「厳しい先生とはきいていましたが、結果がでるのも早いわ。」


「ありがとうございます。」


 ただ、奏歩の母親が村上先生に丁寧に礼を尽くすのに対し、父親は黙って少し離れ、奏歩だけを観察していた。


 女子が3回戦に進んだという朗報をうけ、伊東先生と男子バスケ部も女子のゲームを見学に来た。男子の中には日々練習を、ともにした戦友であるCチームがいたが、何よりも女子人気ナンバーワンの綾瀬くんがいた。


 綾瀬くんは奏歩を見つけ、気楽に声をかけてきた。


「女バスつえーな。すげーなって思ってさ見に来た。3回戦、応援するから。がんばって。」


 綾瀬くんは、普通っぽい良い人であった。


「あっ、あのっ。」


 雄が真っ赤になって名乗りをあげた。


「キャプテンの、宮田ですっ。以後おみしりおきを。」


 男バスからどっと笑いがおきる。雄はウケを狙ったのではなかったが、結果として場を和めたのだった。綾瀬くんはからかわれている。


 凛は続けて名乗りたかったのをぐっとこらえた。いいんだ、あたしは、プレーで綾瀬くんに見初められたい。


 敵の第1中学は、ほとんどがミニバス経験者とあって、ウォームアップからドリブルがうまかった。それも、5人が5人とも全員うまい。幼いころからボールに触れた奏歩が5人いる感じだった。しかし、ただ1つだが決定的なウィークポイントがあった。平均身長が低い事である。


 村上先生は話しだした。


「いい? 地区予選3位までが近畿総体出場校よ。なのでこの3回戦を勝って決勝へ行くか、負けても3位決定戦に勝てば出場権は獲得できる。勝算は大いにあるわ。だからリラックスして。」


「そして今までは小手調べ。ここからは本気なのよ。もったいぶるのは無しでなりふり構わず勝ちにいきます。相手とは身長差があるわ。卑怯でもいい、私たちは勝つ。信子にボールを集めて勝負します。相手チームはミニマム! こてんぱんにするわよ!」


 3回戦が始まった。

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