38.ウィンターカップ。2回戦の2。
雄と信子は凛をフォローするために連携した。右ポストへ信子があがる。そこへ雄がスクリーンをかけにいく。信子は、自分のディフェンスを壁になってくれた雄にひっかけて、左ペイントエリアの0度ポジションに移動する。しっかりとディフェンスの裏をとった所で本来なら、奏歩から信子へのパスがきていた。
しかし凛はスクリーンしている雄へパスを出してしまった。これは違う違うと雄。焦って信子へ高いパスを放つ。信子はかろうじてそれを受け止めなんとかゴール下のフックシュートを沈めた。危ない場面で決めてきた。
攻守交代。場面は打って変わって三波第3中のディフェンスへ。凛はもつれる足をどうにか踏ん張って腰をおとし、落ち着いてディフェンスのかまえを取った。
相手の5番の視線が右へと流れるのを察知した。凛は右だな、そう思った。そしてパスモーションに入ったところへ手を伸ばす。ギリキリ届かなかったが凛の動きをみてピンときたるみがなんとパスカットに成功。
ボールをはじいてしまいあたふたしているところへ麻帆がフォローにはいり優雅にレイアップをきめてきた。
これで点差は18対8。まだまだ安心は出来ないところである。
信子はマンツーマンの相手との間にかなりの身長差があると気づいた。これを利用しない手はない。信子は敵にわざと面をとらせた。パスがとおる。相手は振り向いてシュートしようとする。が、そのボールは信子がやすやすと取り上げてしまった。
「センターにいれちゃだめ!」
敵の4番が叫んでいるのが聞こえた。
信子はふりかぶって走っていた麻帆へとロングパス。麻帆はついてきたディフェンスをみこしてワンフェイクいれたあと、45度でジャンプシュート。敵のペースが段々と崩れてきているのがわかった。
焦るようにジャンプシュートを落としたり、パスミスがあったりだ。敵のミスに乗じてレイアップシュートをきめるのは奏歩がいない今、麻帆だった。
「さすが。2年の貫禄!」
雄が麻帆にハイタッチする。ついでにお尻にもパンチをくらわす。
るみもがんばっていた。彼女が初心者だということはまだバレてはいないようでディフェンスはまあまあな距離をあけている。凛はそこをつこうと思った。
ミートする振りをして手渡しでるみからボールをもらうとるみを壁にしてスリーポイントシュート。沈めてきた。やっと凛はチームにいいところを見せられた。18対13にまで追いついたところで敵の津中がタイムアウト。
村上先生はメンバーに動き方を伝えてきた。
「相手の5番をみて。奏歩にダブルチームした子よ。もう体力がないのか、足が動いてないわ。オフェンスはそこをついて5番と1対1して抜きましょう。凛、できるわね。それから、私たちの失点は全て相手によるレイアップシュートよ。多分止まってうつシュートに自信がないんだわ。だから、シュートは打たせなさい、構わない。入らないんだから。それよりも抜かれないように距離をとること。私たちはまだ足を止めないわよ。いいね、はいファイト!」
凛は悔しかった。本当ならあたしもわかってたはず。これくらいの状況判断できたはず。でも初の公式試合だという緊張と、走り疲れで頭が回っていなかった。よし、取り返そう。ここ1番だ。
それからの凛は周りをよく見始めた。ゴール下に信子がいればパス、麻帆からのフォローにはタイミングよく甘える。5番を抜くまではいけなかったがドリブルで引き付けたあと雄にパス。るみが抜かれるのを見越してフォローにもいった。
1人がいきいき動きはじめると、不思議と他の4人皆の足も軽くなる。1クォーター、2クォーターでの苦戦が嘘のように3クォーターへとすすみ、4クォーターでは36対48と、ギリギリではあれども見方によっては余裕をもった成績で津中学を破ったのだった。
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