37.ウィンターカップ。2回戦。

 2回戦であたる津中学は、奏歩が止められない怒涛の畳み掛けをし、1回戦で暴れまわったのをしかと見ていた。そして恐れをなして奏歩対策を処してきた。奏歩に実質ディフェンスを2枚つけたのだ。


 ボールをもらうとすぐにディフェンスがついてくる。奏歩の前には4番がドリブルに絡んできてもう1人5番が抜かれないよう距離をとって当たってくるという作戦が敷かれていた。奏歩はそれでも抜くのが不可能ではないなと思った。ただ、ここで無理をしてファールでもしてしまおうもんなら、またワンマンプレーだ、独善的だと凛に怒られる、とも思った。


 そして考えた結果、フリーになっていた凛にパスを回すことにした。5番が奏歩についたぶん、凛は空いている。自然とボール運びが凛の役目になった。


 凛は正直困ってしまった。どうしていいかわからなかった。ウロウロと明白な目標なくドリブルする凛。前が空いていたのでジャンプシュート。しかし外した。緊張してしまい手首のスナップがいまいちしっくりこない。


 ポイントガードってこんなに、司令塔だったんだ。ゲームを組み立てるのはあたし、出来ないなあ。奏歩って凄かったんだ。今更、凛は感心した。そして信子へパスしたがはたかれた。敵の点数が入ってしまった。


 凛は奏歩の真似をしてドリブルで中へ突っ込んだ。シュートを45度の位置から放った。やっと入る。だがこの時点で点差は18対4まで開いてしまった。


 奏歩がやや、疲れてみえる。ボールに触れずディフェンスがきつく、走るだけ走らされるというのはストレスがたまるものなのだ。


 みかねた雄が凛を呼んだ。


「凛。集中。」


 凛は再度フリーでジャンプシュートを放った。しかし外れる。


「メンバーチェンジ、タイムアウト。」


 村上先生が奏歩を下げた。代わりに入ったのはるみだ。


「るみ、凛を元気づけてあげて。」


「はい。」


「まだ2回戦よ。奏歩なしでもあなた達ならいけるでしょうが。」


 るみはまだまだ初心者で、レイアップシュートの訓練中だった。テニスで鍛えた腕力はあったが脚力はまだおぼつかない。


 そんな初心者のるみをどうして出すのと凛は尋ねた。村上先生は答えた。


「3回戦であたるチームがこの試合を偵察にきているわ。ディフェンスに苦戦する奏歩の癖やパターンなど弱みを観察されてはいけない、そう踏んだのよ。」


「男子チームに比べて、全然あたりはやわなはずよ。何をみんな緊張してるの。このくらいの点差、へでもないわね。よし行こう。」

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