マダム。
今宵のメニューでございます。
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■menu15:「いらんわ妖怪とトマト小僧」
真夜中の台所。
闇の中を薄っすらと浮かぶ、エプロンの結び目。
トントンと。
柔らかな包丁の音。
ハミングのような。
透明な歌声。
「そういうのぉ・・・・」
「いらんわぁ・・・・」
窓の外には大きなお月さま。
だが、涙で滲むマダムには輪郭がぼやけている。
ポタリと落ちるものは。
玉ねぎのせいだと。
「そういうのぉ・・・・」
「いらんわぁ・・・・」
ハミングは続く・・・。
人差し指で拭って。
もう一度。
トントントン・・・・。
「そういうのぉ・・・・」
次のフレーズを低い声がさえぎった。
「トマトがなくてもぉ・・・」
「えっ・・・?」
振り向いたマダムの肩に、そっと置かれた温もり。
「うまいもんだねぇ・・・」
耳元で囁くような、旦那様の優しい歌声。
小鳥家の台所は、愛で包まれるのでした。
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「新吉っつあん・・・・」
「へい・・・・」
「何や、大丈夫みたいや・・・人力車、出したってぇ・・・」
「へい・・・・」
無人の田んぼの間の道を、人力車がカラカラと。
眩しそうに夜空を見上げたジジイ(誰?)はそっと、呟いたのでした。
「月が、綺麗やなぁ・・・」
だから、誰だってば!
作者からの返信
進藤 進様
今夜のメニュー、受け取りました。
しんみりと美しくいいお味でございました。
ありがとうございます。
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~真夜中の勝手口~
「?」
包丁の手を止めてその主婦は勝手口を振り返った。
「いま、誰かそこに?
車輪の音がしなかったか?」
勝手口の扉をいきおいよく開けて外に飛び出す。
家のすぐ下、田んぼの真ん中の一本道を行く人力車が月の明かりに浮かんで見えた。
「あぁ!あなたは!」
主婦は遠ざかる影に手を合わせた。
「次は!
次こそは!
すぐきのお漬け物を持ってきてください!」
小さくなっていく影がくしゅんとくしゃみをしたようだった。
お義母様・・・(,,゚Д゚)
作者からの返信
蒼翁様
コメントをありがとうございます!
そうなんです。
お義母さま!
(ヨヨヨと泣き崩れる)
小烏さん、こんにちは。
コメント失礼いたします。
塩ラタテュイユ、初めて聞きました!
出来上がりもスゴく美味しそうです!
夏野菜が旬のうちに(もう遅いかな?)一度試してみたいです!
お義母さん、コメントがキビしいですね…… ^^;;;
作者からの返信
下東 良雄様
たくさん読んでくださって、ありがとうございます!
まだ夏野菜も大丈夫でしょう。
足りなかったとしても、あるもので作りましょう。
義母は忖度してくれませんねぇ。