第33話

 しゆんぼうたるろうけんさんせんめいたるせいこうにおわったじようほうはくたる世界をしんかんせしめかねない『研究ノート』をろうだんしているわたしは巨億の全人類に『研究』を発表する義務があるのではないかとこうかくされました。わたしは沈思黙考致しました。『巨億の世界を往還』できれば巨億の人類は宇宙のしゆうえんをむかえても百億の多元宇宙内で生存することができる。身近な問題としては『この世界での人生』に満足できない人類が縦横に百億の多元宇宙内の『人生』を体験できる。わたしはちゆう致しました。巨億の人類の生存のためであろうとも一個人のふんまんの矛先であろうとも『この世界のわたしたち』が『ほかの世界のわたしたち』の人生を侵害する権利はございません。わたしはみずからの結論に喫驚致しました。ひつきようろうの研究は天才的だがまったく無意味だ』ということです。『ろうの研究はたる人類文明の到達点として歴史にてんこくされるべきかもしれないが現実に利用することは害悪にほかならない』と。わたしは『研究ノート』と『脳髄非侵襲型端末』の処置についてこうかく致しました。『百億の自分は百億の自分なりの使命があるのだから必要ない』と。けつしたわたしは『研究ノート』を一ぺーじずつはくさせてきようじんなるシュレッダーで処分するとともに『脳髄非侵襲型端末』もさいたる一般廃棄物としてほうてき致しました。わたしは致しました。『如いかんかこの研究の結果が天国のろうのもとにとどきますように』と。らい元来どおりらんなるわたしはぎようこうなるしようがいしや年金二級でこうをしのぎながららいなる父親の鉄工所に勤務するというじんぜんたる日常をけみしてゆきました。三十歳の誕生日をむかえると『あれから一年ったのか』という感慨とともに『もうひとりの自分の両親をあやめた真犯人はだれだったんだろうか』などという空想にひようされ漆黒の真夜中のきゆう窿りゆうに明滅するぼしを仰視致しました。

 巨億のぼしゆうすいと明滅しておりました。

 五つの恒星丈が特段さんらんと致しておりました。

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