第20話

 喫驚して顔面そうはくとなっているたちをへいげいしておれさまはつづけてやった。『いいか天皇も日本もどうでもいいおれもけんっぱやいしちんぴらをぶっ刺したこともあるがよう意味もなく人間が殺しあうなんてげているっつってんだ蛸野郎共』ってな。ひびれた黒縁眼鏡をかけたそうの軍人が『大尉殿御正気ですか』なんつうからおれはげつこうしていってやった。『わかったよ我我一個小隊は戦争なんてげたことをやめさせるためにいの直樹総統とやらに直訴にゆく』そうの軍人はけいれんするようなこゑでのたまった。『大尉殿総統への直訴はていこく刑法で死刑であります』ってな。おれさまは無視していってやった。『おれさまはちかうからひとりも犠牲者なんてださないからな』ぼうぜんしつしていたたちやがてひとりひとりぎようするおれさまに敬礼していった。『よし』とけつしたおれさまはないまんしんそうの一個小隊をきようどうしてばくなる新潟国内に鎮座する大政翼賛会総統いの直樹のもとへとぼうひようの精神でまいしんすることとしてやった。新潟国内への最短ルートとして埼玉県群馬県と進軍戦略をたてさせてこくしゆうしゆうたる千代田区戦線からとんざんすると造次てんぱいもなくおれさまたち一個小隊は『第二次大日本ていこくへのクーデター因子』とされるようになった。背後からはけんじんなる一〇式戦車を主戦力とする日本国陸上自衛隊が肉薄しており前方ではるいじやくなる七〇式戦車を主戦力としておれたち一個小隊をクーデター因子としたていこく陸軍がそれぞれおれたち一個小隊をせんめつせんと猛襲してきやがった。戦争も結句は人類規模の大けんだ。おれさまはじゆんこうかいの長岡市でのけんで鍛練した直感でこうまいなる一個小隊をきようどうし可能なかぎり日本国陸上自衛隊第二次大日本ていこく陸軍そうほうとの衝突をようそく阻止しながら――無論おれさまは『相手』にだって『ひとりも犠牲は』ださねえ覚悟だった――激戦地の群馬県から長野県寄りに上越地方へとひとりの犠牲者もださずに新潟国内に生還してやった。きよくてんせきの第二次大日本ていこく内はたいてんの日本国陸上自衛隊にちんにゆうされつつありほうはくたる新潟国かいわいじようしている百戦錬磨の日本国陸上自衛隊第十二旅団の目標はめいせんそうない戦略会議として臨時国会を開催しているたるていこく国会とおもわれたんだ。ぎようこうにも生還したおれたち一個小隊は大政翼賛会いの直樹総統に直訴するためかんかんがくがくていこく国会にばくしんしてやったんだが如いかんやらいの直樹総統は欠席だときたもんだ。惰弱なる直樹ちゃんは亡命でもしちまったのかとおもってたいせいにおちいり意気阻喪した貴族院議員に尋問してみたら第二次大日本ていこくはいじくをさとったいの直樹総統は旧田中角栄邸にて切腹自殺せんとしているらしいじゃねえか。

 戦争ってのは本統にげている。

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