第19話

 おれさまは巨億のりよにでた。

 百億の世界を遍歴するりよってやつだ。

 とくあいをそそいでくれるはずだったきゆうていたいりよの両親の殺害事件の真相をてつけつしてやろうぜと独立の精神でしんしようたんしていたおれさまだが容疑者四人の供述に捜査もてんしてわいざつわいしようなる探偵さんの事務所で沈思黙考していたなるげんうんに猛襲されてひやくがいきゆうきようからりよりよくを喪失し『おれおっ死んじまったかな』とおもった刹那複雑怪奇なるのう穿せんさくされたような感覚にひようされて無涯無辺のようなつつやみから覚醒すると旧日本兵たちぎようするおれさまをじようするようにいんぎんなるそうぼうでおれさまを凝視していやがった。おれさまは天才的頭脳でぴきーんと勘付いたね。『は天国かいや地獄だなだから旧日本兵の死霊がおれさまをえん様のところにつれてゆこうとしてんだな』と。どっこいおれさまの推理は間違っていた。しよくそうぜんたる軍服をてんじようさせた旧日本兵たちは厳密には旧日本兵じゃなかった。旧日本兵らしき巨漢たちしきもうろうのおれさまに『大尉殿意識はたしかですか千代田区戦線はこうちやく状態にあります無事ならばつぎなる戦略をひようぼうねがいます』なんてほざくんだ。たしかまんしんそうのおれさまはなぜか旧日本軍の軍服をてんじようさせているしごうしやなる大尉の紋章までしゆうしてあった。なにがなんだかわからずたんをきるように質問してゆくうちにおれさまが異常な事態にまきまれたことを認識した。ひつきよう『この世界』では東京裁判間近に田中角栄大政翼賛会が第二次大日本ていこく義勇軍を結成大政翼賛会のおおよそを新潟県にしようへいし『第二次大日本ていこく』をひようぼう第一次新日戦争勃発きようこう第二次大日本ていこくを樹立して第二次新日冷戦へ突入一九八三年八月二三日に一師団長たる軍人の父親と軍需工場長たる母親のもとにおれさまは誕生大日本ていこく軍事特別だいがく卒業後陸軍少尉にちゆつちよくされ二〇一〇年大尉となったおれさまは『ていこくの楯』としてに配置されたってんだ。旧日本兵はひつきよう『第二次大日本ていこく』陸軍の軍人だってわけさ。眼鏡猿みてえな軍人いわく『二〇一二年四月二十二日三宅島かいわいでの大地震発生直後いの直樹閣下の命令により陛下きゆうじゆつ作戦をけつ日本国は非常事態宣言を発令千代田区皇居かいわいを臨戦態勢としました我我前橋駐屯師団は前橋から千代田区まで進軍ていこくは超法規的措置として宣戦布告我我一個小隊が攻撃を開始したところで日本国も交戦権発動自衛隊戦車の砲撃により大尉殿は意識が混濁――』てなこった。おれさまはふんこうがいしてほうこうしてやった。『おまえらはほうか二十一世紀にもなって日本人同士で戦争してんのか』ってな。

 軍人たちはぽかーんとしてやがった。

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