第4話

 おれは誕生した。

 百億の世界の片隅でだ。

 西暦一九八三年八月二三日へんな新潟県長岡市の零細鉄工所経営者の住宅がしゆつこつたる火災で黒焦げになっちまってしゆんぷうたいとうたる取締役たる男性と妊娠九箇月の専務たる愛妻がへいしちまった。へきすうたる長岡市の工業地帯に位置する築二十年の住宅は男性の経営する零細鉄工所と隣接しておりトラック用の通路をけみして逆『L』字型に入組んだ地形となってやがって勇猛果敢なる消防がほうちやくしてもれんの消防車が一台しか逆『L』字型の通路にちんにゆうできず木製の住宅と零細鉄工所は全焼しちまった。男性は焼死愛妻は重度のけどで生存していたがかいわいの病院に搬送されたえいが確認された。愛妻はしゆもなく出産のために当病院に入院する予定であってせいかくなる担当医が司法解剖をそうされてまんしんそうの女性のにくたいにしたところ子宮内のえいの生存が確認され焼死体たる母親からひとりの赤子がせきてきに誕生したわけだ。おれさまさ。かんどくのおれさまの六親眷族はいずれもれんちゆうきゆうの経済的理由なんかでおれを引取れずおれははんぶんじよくれいの里親制度で不妊症におうのうしていた義父母のもとにほうちやくした。豪放らいらくなる義父母の自宅はさんらんたる長岡市内希望が丘に位置しており幼稚園を卒園したおれは長岡市立希望が丘小学校長岡市立西中学校と進学したがわいざつなるおれのクラスはもうまいの不良たちの巣窟で影響されたおれさまもけん斗りできよくべんしなかったせいでめいちようたる不良のらくいんをおされきゆうていたいりよの高校進学を諦念しちまった。おうようたる土木業者にひんしつされたおれさまは同様にけばけばしい中卒の不良少女と恋仲になってあんたんたるはいきよみてえなアパートでどうせいすることになったんだがようけんっぱやい最愛の恋人がしようりようたる長岡駅前の大通りでちんぴらと口論になっちまって筋骨隆隆のちんぴらが白銀のナイフで恋人を刺殺しようとした刹那同伴していたおれさまがへんぽんとして白銀のナイフをだつして筋肉質のちんぴらの脇腹にナイフをぶっさしちまった。けんじんなちんぴらは露命をつなぎとめたがおれさまは正当防衛が認定されながらも『傷害の罪』で懲役三年の量刑を甘受し少年院法によって新潟少年学院に十箇月入院することになっちまった糞野郎。

 おれは真人間にならなきゃならなかった。

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