【69:作品としての個性(アイデンティティ)】

 前回の話から続いています。

 作品はひとり一人の個性(アイデンティティ)です。

 その個性を失いつつある時代になったのではないでしょうか?

 異質な作品より、同質な作品。

 この傾向は世の中においても増えたんじゃないかなと感じることがあります。

 例えば、入社してくる若手くんたちなど、一様に似た者に見えるのです(そして、似たように辞めていくんだよね、うちの会社・・・)。


 作品のベースになるものに大きな差はありません。

 いわゆるテンプレをもとに、出来るだけオリジナルになるような肉付け(というより味付けみたいに思うけど)しているだけだと思います。

 でも、それだってすごいことなのですよ。

 そこはちゃんと認めるべきです。

 けど、ここまで無数に増えてしまったことで、単なる量産型になり下がってしまいました。

 そこが勿体ないことと思います。


 そして、こうすれば人気が出る。

 こうすればデビューの可能性が高まる。

 どのレーベルであれば、こんな作品が好まれやすい。

 つまりそれは、ただの傾向と対策なんですよ。

 私はそこまで研究熱心じゃありませんし、若くも無いので、そこまでやる情熱はありませんけど。


 これ、何かに似ているな~と頭を巡らせてみたのですが、そういや受験戦争時代の受験勉強なんか、こんな感じだったな。

 今も傾向と対策はあると思いますけど、あの時は必死だったから、過去問を研究しました。

 それと同様で、ライトノベルの人気既刊本など、過去問そのものです。


 そう言えば、すっかり忘れていたあの頃に聞いた言葉を突然思い出しました。

「答案用紙は採点者に捧げるもの」

 そんな時代でしたけれど、同様に・・・。

「作品は出版社に捧げるもの」

 プロを目指すならば、読者よりもまずはそちらが優先ですね。

 そう考えると、やっぱり似た感じの無難な作品ばかりになってしまうのも頷けます。


 更に話は続きます。

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