【68:もっともなお言葉】

 ある作家さんのインタビューが、ネットに掲載されていました。

 私の学生時代(90年代)、よく読んでいた作家さんの一人です。

 残念ながら、もうそうした小説は書いていないとのことですが、久々にお見掛けしたので、インタビューを拝見いたしました。


 インタビューの中にあった話の中で、とても興味深いコメントを見つけました。

 現在のライトノベルは『異世界転生』(転移を含めると思う)、『チート能力』、『ハーレム』といった物語が量産されていると(インタビュアーさんは『悪役令嬢』も付け加えていた)。

 オリジナリティに対しての疑問とか、同じような小説を書くことへの恥ずかしさとか。

 更には、異世界転生系は全部同じ作者じゃないかと苦言を呈していました。

 ・・・もっともなお言葉ですっ!!

 この作家さんは昔もビシッと言うタイプだと思っていましたが、その時代の読者として、思わず拍手したくなりました(仕事中の暇つぶしで覗いていたから、それは出来なかったけど)。

 

 当時は自分しか書けないものを書こうとする気持ち、プライドもあったとのこと。

 これはきっと、ご自分のことだけではなく、90年代のライバル作家さんたち、全員を示す言葉だと思います。

 いや、素晴らしい!

 黎明期のライトノベル(あの頃はそんな言葉すらなかったし、私はファンタジー小説と読んでいた)を支えた作家さんだけに、とても説得力を感じました。

 

 誰か、ズバッ! と言って欲しかったと、常々思っていました。

 ですがこのインタビューがどこかの雑誌に掲載されるわけではありませんし、ましてや古巣(もう何も出していないですよね?)のKADOKAWAで取り上げられることもないでしょう。


 あの時代を支えた作家さんも、いつの間にか消えてしまったのは、こうした今の流れに嫌気がさしたのかも知れません。

 今のライトノベルの隆盛は素晴らしいと思いますが、こうした傾向が色濃くなってしまったことで、黎明期の名作、名作家が消されてしまったように感じています。

 

 この話は続きます。

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