ふらつきの遊園地へようこそ 完
朝香るか
第1話 病からのメッセージ
始まりは突然で、ふらつきから出社できなくなった。
何でと思うし、周りが回っていることにおかしいと思う。
コーヒーカップを回しているようで気持ち悪い。
立ち上がることが難しい。
買い物なんてうまくできない。
味より遠心力を受けているような感覚をどうにかしてほしい。
しばらく横になると楽になる。
生活必需品を手に入れることで精いっぱい。
時間を守れない。
横文字や欄を目で追うことができない。
6か月くらいは回り続ける。
薬を飲んでも変わらない。
ストレスらしいけど働かないと生きていけない。
悪循環はふらつきとなり、
めまいとなり、
耳鳴りとなり、
いつもいつも騒がしい。
遊園地はまだ始まったばかり。
今度はメリーゴーランドへご案内しよう。
永遠のメリーゴーランド
囚われた豪華な檻の中に
クルクルグルグル
たーん、た、たーん、た、たーん
リズミカルな音楽とともにオレンジ色の光が回りだす。
終わりなく続く娯楽の呪縛。
今日はどの馬車に乗る?
それとも馬?
ここは人生は終わりに向かって進むもの。
この急激な進み方はどういうことなのか?
誰の身にも起こりうる。
ストレス性の病の数々。
壊れた体は二度と戻らないのよ。
修理しても、容易く豪奢な監獄に戻る。
「だめじゃない。逃げちゃ。ここで一生いるのよ」
人間の努力なんて塵のよう。
治したくて、戻りたくて、足掻く。
努力は一度の怠けによって台無しになる。
努力し過ぎで体を壊すわけでもなく、
ストレス発散しながら自分の体を少しずつあげていく。
大丈夫。言い聞かせて、涙を流して、
歯を食いしばる。
苦しい。廻る世界に閉じ込められても、
笑えるようになりたい。
監獄を出る手段も開発されてはいる。
漢方だったり、薬だったりする。
個人差は大いにある。
処置が効いて監獄から出られる人もいるだろう。
しかし効かない人も一定数いる。
吐き気はするし、副作用としてのおう吐だってある。
体質に合わない人は監獄を出るすべがない。
ストレスを溜めないことと水分を多くとること。
毎日1リットル以上の水分をとると何となくマシにはなる。
気圧によって体調は壊れる。
専門家もほぼいない。だから発信する。
本当に気合だけでこの牢獄を出られるのだろうか?
今日も回る。
永劫にも思える。
ツラいといえば頑張れと言われる。
ツラい。
いつかコントロールできると信じて体調の記録をつけていく。
監獄から脱出できるその日まで。
「ウフフ、ここから出たいのね。わかりましたわ。
次は恐怖の館へご案内しますわ」
手を引かれ、メリーゴーランドを出された。
次はゴーストハウスだ。
「さぁ、歩かれよ。それとも歩けないかねぇ?
ずいぶん長くいたようだからねぇ。
次は貧血のフルコースだよ。
フラフラしても自分の足で進まないと
永遠に遊園地から脱出できないよ?」
「わかっている」
フラフラする。
足がうまく前に進まない。
そう、貧血症状なのだから当たり前か。
右に左にふらり、ほらり。
「まっすぐ歩けるようになるのはいつかね」
食生活の改善と鉄分と葉酸をとること。
つまり栄養バランスを考えて摂取しなさいということだ。
よく噛んで。胃に負担をかけないように。
怖くないよ。ほら、できる。
大丈夫。
努力すればできるようになるから。
秋舐めないで。日々を一歩一歩歩んでいこう。
私たちは人間なのだ。動物なのだ。ITがいくら進歩しようとも、哺乳類であり、老化は必ずやってくる。
この遊園地は楽しんでいただけたかい?
楽しんだのなら2度と来るでない。ここは人体の学び場。
ウフフ、あなたが素直でないからここにお招きしたの。
人の構造を理解できないものが来る場所さ。
だからほら、他人のことでもなく
自分のことを大切におし。自分の好きなことを大切になされよ。
自分の人生を歩むんだよ。
END
ふらつきの遊園地へようこそ 完 朝香るか @kouhi-sairin
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