曰く、この猫は。

玄葉 興

なんだこの可愛いやつめ

俺は天道 玉木。27歳社会人。適当に生きてたらいつ間にか20後半。正直そろそろ結婚を考え始めるべきではあるだろうが、今だけはそんな気分になれない。何故ならばこいつがいるからだ。

「にゃあお」

ほら聞いてくれよこのかっわいい声。こんなのが居たら彼女とか考える前におもちゃ買ってきちゃうのが当然の摂理だろ?紹介が遅れたがその猫はニャル。道端にぼろぼろで横たわっていたところを俺が助けた野良猫だ。 深夜歩いてる時にずっとミィミィ鳴いていたのが聞こえて、思わず飼ってしまったんだ。幸い俺が住んでるマンションがペット可で良かった。しかもセキュリティも万全だから この天使のような子が奪われるような恐れはない。それにベランダから外は圧倒的に高さがある。こいつが逃げ出してしまうことも、万一変なやつが居たとしてもここまでは来れない。完璧だ。まさにこの子を育てるためだけの環境と言っていいだろう。でも正直不安を隠せないところはある。なぜなら名前に付けているニャルというのが、俺が助けたときに、暗くて顔がよく見えなかったが背丈の低い男が何故か

「ニャル■■■■■様…」とよく分からないことをうわ言のように呟きながらニャルのもとで跪いていた。それでどうにも頭によぎり続けてつけた名前だからだ。俺が外でこの子の話をした時にそいつが現れたら狙われてしまう恐れがあるからな。そう思って、俺は あんまりニャルの話はしないようにしてるんだが、いかんせんかわいらしくてついついしゃべってしまうんだよ。あまりにも超キュートで愛らしいすぎる大天使のようなニャルの天才話をにゃ!

あれは俺が仕事で疲れて帰ってきたときの話だ。もう飯を食う気力もなくてベットですぐ横たわろうとした時。ニャルがそこで眠ってたんだ。な?賢いだろ?俺が寝る時快適に 寝るためだけにあっためておいてくれたんだ。あの時は写真を撮りすぎちゃったよ。そんなに有難いことをしてくれたのにどかすのもしのびなくて仕方なくソファで寝たけどな。最近はお気に入りにゃのかずっと俺のベットで寝てるよ。

でなその次になんとな、なんとな!あいつがご飯を作ってくれるようになったんだよ。 あまりにも偉すぎるよなぁ!!!猫の手も借りたいとかぼやいてたがまさか本当に、手伝ってくれるなんてにゃ。初めてくれた飯は涙を流しながら食べてたよ。飯の味も三つ星シェフが作った料理みたいに美味いし。

極め付けは「仕事」を代わってくれたんだ。助けた時はこんなにしてくれるだにゃんて思ってなかったよ。鶴の恩返しならぬ、猫の恩返しだってにゃ。おかげで俺は家から出ることもにゃく悠々自適に暮らす毎日さ。正直 時間が有り余って暇な時もあるけれど、ニャル様様って感じ。

というか、あれ?いつの間に俺ってこんにゃに背丈が小さくにゃってたっけ?モテにゃい理由は猫が居るからくらいに思ってたんだけどにゃ。ん?それに、いつの間にこんにゃに喋り方が猫っぽくにゃってるんだ?ニャルとはにゃす時に冗談めかしてはにゃす時はあったけどこれほどではにゃかった。それににゃんだか体が軽い。はは、これじゃまるで山月記の虎じゃにゃいか…。は?いや俺は心の病も負ってにゃいし、下手に変なゃプライドも持ってにゃいし、有名人になりたいってわけでもにゃい。それにゃのににゃんで…!?

いやよくよく考えろ。普通に話している時も若干猫っぽかった。どういうことだ。てか 猫が仕事を手伝うっておかしいだろ。ご飯が出てくるのもおかしい。それじゃまるで俺が猫と入れ替わってるみたいにゃ…。

その瞬間思考は溶けてゆく。まるで泡のように。都合の悪いことは消えて忘れられる。 そんなことは猫でも知っているだろう。自分の置かれている状況に気づいてしまった。せめてここから出なくては、他人に気づいて貰えさえすれば。しかし生憎ながらベランダより下ははるか遠く。今の体をもってしても生きることは敵わないだろう。マンションの住人も同じようなものだろう。今の自分の姿が猫なのかヒトなのかはわからない。でも例え分かって居たとしても、協力を仰ぐことは難しい。どう説明すればいい?そもそも会話は可能なのか?でもせめて外にはと。ドアに手をかけたその瞬間、天道 玉木の意識は消えた。

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曰く、それは混沌。曰く、それは狂気と混乱をもたらす。曰く、それは貌がない〝故に〟千の貌を持つのだと。








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俺は。2歳半。もうちょっとで3歳。 今日もお家でごろごろしてる。でも一人だとやっぱり寂しい。

「ピンポーン」チャイムの音が鳴る。

あっ!帰ってきた!

「ただいまタマキ。ちゃんとお留守番できたかい。この可愛さで元人間だとは思えないな。」褐色の肌をした美男子ははにかむ。


曰く、それは




















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曰く、この猫は。 玄葉 興 @kuroha_kou

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