「ねぇ、私は攻略対象に入る?」

「インキャくんは普段何やってるの?」

授業が終わり、帰宅中。

一人で帰宅しようとした俺は彼女に引き止められ、また二人で歩いていた。

「アニメ見てるかゲームしてるか……遊里は興味無さそうなことかな……」

「えーそんなことないよ、サンピとかナリトとか?見てるし」

「あー、はいはい。深夜アニメとかは、見てないんでしょ?」

「インキャくんと話す話題になるなら、見るよ」

「コミュニケーションツールとして見るのはなぁ」


そんなことを話しながら、俺はあの時の彼女のセリフのことを考えていた。

--------------------------------------

「恋愛ゲームってさっき言ってたけど、好感度、上がってるから」

「後はフラグ回収、するだけなんだけど」

--------------------------------------

なんてことを言われて以降、彼女から話しかけられることが多くなった。

答えを待っているのだろうか?確証は無いがそんな気がしてならない。

だとしても、その彼女の提案に対する選択肢を、まだ決断出来ずにいた。


「ゲームはどんなのやってるの?」

「ヘビバンとかAGOとか、有名なソシャゲをかじってるくらい……」

本当は恋愛ゲームを主にやっていたが、あの時の彼女のセリフがちらついて、言うことが出来なかった。

彼女とその話題になることに、何故か俺は恐れていた。


「ん?恋愛ゲームはやってないの?すごくやってそうなのに」

「……やってるよ」

そんな俺の思考を読み取るかのように、彼女にそう聞かれてしまう。


「やっぱり!そういう顔してるもんなぁキミって」

「そうか……」

「ということは、女の子には興味はあるんだね」

「……興味あるだろ、男なんだから」

「興味無い人もいるじゃん。キミはあまり話さないから、もしかしてと思って」

「……興味あります」

「で、キミはどんな女の子が好きなの?」

「なんでそんなことを聞くんだ……」

「えー?気になるから」

「黒髪ショート」

「おお正統派!」

「性格はツンデレが好き。ツン期は長ければ長いほど良い。最後の最後でデレるのが良いんだ」

「でたーオタク特有の早口!w」

「聞かれたから、答えただけだ……」

「普段もそれくらいイキイキと喋れ!」

「それは無理……」

「えー」

彼女は質問が多い。がつがつ話しかけられるのは慣れていないため疲れてしまう……。

「ねぇ、私は攻略対象に入る?」

「え……?」

「黒髪ショート。私と一緒だし」

「それはそうだけど……」

「あと、私はあなたでも良いと思ってるよ、好きだし」

「今なんて……」

「キミは?」

「えっと……」

彼女の唐突な告白。

彼女の俺に対する呼び名が「キミ」に変わっていることに、今気が付いた。

心の整理をする間もなく、彼女に返答を求められてしまう。


--------------------------------------

「後はフラグ回収、するだけなんだけど」

--------------------------------------

彼女のセリフが蘇る。

やはり彼女は答えを待っているのだろうか……。


---俺は、逃げずに素直な気持ちを答えることにした。


「えっと……俺も……」

「……なーんちゃって!勘違いしないでよね!友達として好きって意味なんだから!」

「……え?」

「どう?ツンデレ!黒髪・ショート・ツンデレコンプリート!キミの理想のタイプになれたかな?」

「そんなわざとらしいツンデレじゃ意味ない」

「ですよねー」


嬉しそうに笑顔でそう言う彼女。からかわれてしまった。

……彼女は基本的に笑顔が多い。人生を楽しんでいるようで、自分と比較して辛くなる。

「遊里っていつも楽しそうだよな、ちょっとうらやましい」

「あー……」

しまった。ちょっと皮肉っぽく言ってしまった。

自分の歪んだ性格を恨みつつ、彼女の返答を震えて待つ。

「……前も言ったと思うけど、私はキミと話すのが好きなの」

そう言うと、彼女は普段よりも真面目そうな表情になる。

「"友達"と話すとね、嫌なことも見えなくなるの。私の場合はね」

「とも……だち……」

気づけばいつもの分かれ道。彼女と帰る時はいつもここで分かれている。

「でも、キミと話す時は、他の友達と話す時よりももっと幸せな気持ちになるんだぁ……」

そう言うと、普段よりも距離を詰めてくる彼女。

肩と肩が触れて、俺はビクっと反応してしまう。

「チョチョチョ……!!!」

「……ねぇ」

ふわっと甘い香りが鼻の中をくすぐり、頭がおかしくなりそうだ。今起きている状況がつかめそうにない。

「……勘違いしてよ」

「勘違いって……」

彼女の手が俺の手に当たる。

当たった手のひらが俺の手のひらに重なり、指と指を交差してくる。

周りに人が見てないか、そんなことにも気が回らず。

「……明日も、一緒に帰ろ」

「はい……」

ろくに顔も見れないまま、俺はそう答える。

「じゃ、じゃあね!」

「あっ……ちょ!」


俺の叫ぶ声も虚しく、彼女はまた逃げるように走って行ってしまった。


彼女は、間違いなく答えを待っている。

俺は、明日告白しようと心に決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いつも一人の陰キャな俺に健気な陽キャ同級生が興味本位で話しかけてくる件 たか式 @kyousenshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ