ていていてい

生來 哲学

姉の願いごと

「やあ弟」

「へい、姉貴。何かご用で?」

「うむ、あの件はどうなった?」

「どの件? この件?」

「そう、その件。流石我が弟は気が利くなぁ」

「え、マジでこの件? いいけど」

「ちょっと? なになになにさ? 例の件何かあったの?」

「いやさ、姉貴よ。親愛なる姉貴よ。よくよく聞いて欲しい」

「ふむ、聞こう。弟よ」

「ハードル高いって」

「何が?」

「あえて言えば、ジャンルが」

「そうだろうか? かのジャンルこそ君の得意分野だと思っていたが」

「おかしくない? おすすめの勝負下着を訊くの。弟に」

「聞いて欲しい。私にも姉の威厳ってものがあるのだけれど、恥ずかしながら、私はそういう色恋沙汰には疎いのだ」

「はあ」

「しかしながら、君は数々の同人誌で様々なフィクションの女の子達にカワイイ下着を着せているじゃないか」

「え?」

「え?」

「へい、姉貴? なにか重大な勘違いをしてないかい?」

「ほう、弟よ。偉大なる私のどこが間違ってる?」

「あなたの弟は同人誌なんて書いてない」

「『くれないの☆リリカル正宗』先生ですよ?」

「……!? 何故偉大なる姉がその名を!?」

「クラスメイトがリリカル正宗先生の御本を読んでいたからだよ」

「ひぃぃぃ」

「誰の本? て聞いたら彼女は『あ、君の弟の奴』ってちゃんと教えてくれたぞ」

「あばばばばばっ」

「……もしかして隠していたつもりなのか?」

「恥ずかしながら」

「そうか、ではそんな君に一つ残念なお知らせをしようか」

「え? まだ何か?」

「君のファンを名乗る私のクラスメイトだけど、彼氏がいる」

「アイェェェェェッ! あの人タダで俺の本持ってったのに!?」

「おうおうおう、かわいそうな我が弟」

「……誰のせいだと」

「まあまあまあ。そんじゃ、その悲しみを別のことで昇華しよう!!」

「……具体的に言うと?」

「偉大なる姉の勝負下着選びだよ」

「出来る訳あるかぁっ!」


 かくて、弟は泣きながら偉大なる姉と共に女性下着コーナーを回ることとなるのだった。



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ていていてい 生來 哲学 @tetsugaku

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