ラーメン屋と犬、爆弾

怜悧

ラーメン屋と犬、爆弾

カウンター席だけの小さなラーメン屋。


男は一番奥の席に座った。


「味噌ラーメンを一つ。」


男は薄茶色の中折れ帽子を脱ぎ、丁寧に置いた。

薄汚れた窓から、ぼんやりとした街灯の光と犬のうなり声が入ってくる。


「すいませんねえ、うちのワンコが喧しくて…。」


その犬は元々警察犬だったという。

爆弾魔を追い詰めた際、犯人の反撃で両目を失い、引退したそうだ。


「夢に見るのか、時々こうしてうなされてね…。優秀だったみたいなのに、可哀想になあ。」


店主の話に相槌を打ち、男は箸を置いた。

店を出ると、リードに繋がれた犬と目が合った。

見えないはずの目をかっぴらいて、涎を撒き散らしながら吠えている。


「なるほど、確かに優秀な犬らしい。」

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ラーメン屋と犬、爆弾 怜悧 @routeroto

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