傷ついた細胞の王

@mori-sho

第1話 転生せし人外



正直、自分がただの人だと思ったことはない。


ありえない力を使い、人智を超えた体となり、


だんだんと自分が人から遠ざかっていく感覚が


フルに精神へと降りかかる。


それに耐えられる人間はそうそう居ないだろう。


誰もが逃げ出したくなるような激痛、周りから


向けられる奇異の物を見る目線。


それでも俺は


たとえ化物と呼ばれようと、死人と呼ばれようと


人でいたかった。


だからこそ俺は人間を守り、それに仇なす物は


徹底的に潰してきた。

 

     










けれど、それはただの空想でしかなかった。


守ってきた者から向けられた敵意、攻撃、卑下


の目線。俺はそれを受け入れた。


体がすっと軽くなり、意識が遠のいてくる。


本当はわかっていた。自分がどれだけ無駄なこと


をしていたのか、本来ならもっと違う道があった


のではということを。







………ーーーー!……ーーーーー!………







あぁ……誰かが呼んでいる、とても温かい声、


喉の乾きを癒やすように、自然と体に染み渡る


…………死に際…………か……………


こんな体になっても死ぬときは死ぬのかと、少し


感心したような気持ちになる。



バケモノでも、死人でも、もっと他の道があった


のではないか、もっと助けられた命もあるのでは


ないか、俺は天寿を全うできたのか、自分が満足


できる道はあったのか。



















あぁ…………俺はどうすればよかったのか……








意識が遠のき、眠るように目を閉じる、そして目


を開けるとそこは














賑わう人々が見え、喧騒があり、活気賑わう


街へと俺はいた。





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