補足

第11話補足:先物取引とは?

 この補足では、いわゆる商品先物取引の説明をしていきます。物語の時代設定の関係上、少しだけ変更をしているものの、大筋は現代の先物取引とほぼ同じものになります。


 とはいえ、急に商品先物取引と言われてもピンとこない人がほとんどだと思います。普通に生活をしていれば出てこない言葉ですものね、これ。とはいえ、あえて分かりやすい例をあげるとすると「大手スーパー」と「農家」との契約がとかになると思います。


 例えばある・・スーパーが、とある・・・農家の畑で秋にとれる1トン分の野菜を決められた値段で買うという契約をしたとします。こうすれば、スーパーは「決められた量の野菜」を「決められた値段」で買えるので、事業計画が立てやすくなります。また、農家も「決められた収入」、つまり「安定した収入」が入るというメリットがあります。


 しかしこの先物取引、デメリットも存在します。例えば、秋に野菜が大豊作になったとしましょう。すると「お客様が欲しい量(需要)」より「多くの野菜(供給)」が存在するので、農家は安くても野菜を買ってほしいと願い、野菜の値段が落ちてしまうのです。そうしないと野菜なんて腐ってしまいますから……。


 でも、この時、スーパーは市場価格よりもべらぼうに高い条件でも、「先物取引」で決めた値段で、その契約農家から決められた野菜の量を買わないといけないのです。ね、スーパーは大損しちゃうでしょ?


 次に、野菜が大凶作の場合を考えてみましょう。この条件だと、さっきと逆のことがおきるので野菜の値段は跳ね上がるのです。そして、この時、契約農家の畑で約束した量の野菜が取れなかったとしましょう。するとどうなるか? です。


 じつは、野菜ができなかったから、ごめんなさい。ということは「先物取引」では許されないのです。この状態に陥ってしまったら、契約農家は、他の農家から野菜をべらぼうに高い値段で買ってでも、決められた量の野菜を決められた値段でスーパーに納めないといけないのです。ね、こんなことになったら、農家は大損しちゃうでしょ?


 と、まぁ、こんな感じで「商品先物取引」、利点もあるのですが、なんというか、それと同等ぐらいの欠点も持っていて、なかなかにリスキーなんですw


 ちなみにこの先物取引、世界で初めて生まれた場所は日本です。1730年、つまり江戸時代に建てられた堂島米会所が、世界初の先物市場と言われています。そして、ここのシステムこそが、今、世界中の先物取引のベースになっています。なかなかすごいことだと思いませんか?


 ちなみに先物取引は、こんなことわざにもなっています。それは「青田買い」です。そうこれって「田んぼが青いうちに田んぼの米を買う」という意味でして、まさに先物取引を語源にしているんですよね。


 最後に、取引最終月のことを限月と取引最終日について説明します。限月は、一般的には3月、6月、9月、12月に定められていまして、その月の最後に取引ができる日を取引最終日といいます。多くの投資家や投機家は、この日までに取引を終わらせる傾向が強いので、取引最終日付近では大きなお金が動くのです。


 これを覚えておくと、限月の取引最終日(株の場合はSQと呼びます)にむけて、株の値動きが、先物の値動きに引っ張られて動いていることを実感できると思います。そして、経済のニュースを見ることが「少しだけ」楽しくなるかもしれません。


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第12話:嫉妬する気にすらなれないよ

https://kakuyomu.jp/works/16817139557982622008/episodes/16817139558060283204

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