第24話 応急血液
翼に穴を開けられた二色羽は態勢を崩し勢いよく地面に叩きつけられる。奴はその衝撃により脳震盪を起こして、一瞬怯んだ。
それをリティナ達が逃すはずもなく、素早く二色羽を取り押さえ拘束して無力化する。
優秀な指揮官を失った天羽族の軍の動きはひどく鈍り、先程まで避けていた攻撃でどんどん撃墜されていく。
その後はエルフィン族の自軍が優勢となり、敵は散り散りに撤退するのであった。
味方は疲労困憊になりながらも撃退した喜びに歓喜する。俺も緊張の糸が切れて急に疲れを感じる。
だが、まだ俺の戦いは終わっていなかった。気がついた時には、白衣を着た女兵士たちが俺を担いで連れて行くのであった。
◎○▲
「ジョースケさん。お疲れのところ、お越しいただきありがとうございます」
白衣の兵士たちに連れ去られた後、俺は救護テントで治癒師ヒナルの手伝いをしていた。と言っても、俺はただ血液を抜き取られているだけだが。
「ヒナルちゃん? 改めて聞くけどなんで俺の血が必要なの?」
その問いに彼女は
「ジョースケさんの匂いが治癒効果を発揮するのはわかっていたのですが、あの後包帯に付着していた血液をよく調べたところ……。
なんと血には匂いの20倍の治癒力があったことがわかったんです」
「はぇ~、それはすごい」
「もちろん、採血後に適切な処理をしないと効果が発揮されないのですが」
「ちなみに、どれくらい血を抜くの?」
「安全を配慮して400mlほどいただきたいのですが……よろしいでしょうか?」
俺はもっと採ってもいいと言ったが、ヒナルは断固としてそれを拒否する。
そして、採血中は特に何もすることがないので周りを見ていると、横で俺から採った血液が……。見てると血の気が引くので、別の方向を見る。
救護テントに運ばれてくる怪我人は、人間なら即死が助からないような負傷にも関わらず彼女たちはなんとか生きていた。中には、右肺を貫かれても努力呼吸でなんとか生きている兵士もいた。
「はい、再生活性液と軟膏。早く患者に持っててー!」
「こっちに頂戴ー!」
その一方で、俺から採られた血液だったモノも継ぎから次へと怪我人に提供されていく。痛い痛いと泣き叫んでいた負傷兵に俺から生まれた軟膏を塗ると、途端に鎮静化する。
その光景を見てると何とも言えない気持ちと、戦いによる疲労で生産者の俺はいつの間にか気絶していた。
目を覚ました時には、もう辺りが暗くなり始めていた。
「起きましたか?」
目を覚ました俺にヒナルが声をかける。
「ああ、どれくらい寝てた?」
「そうですね、負傷兵の皆さんの傷口が塞がるくらいには寝ていましたね」
「そんなに長い時間寝てたのか……」
そんな俺を見て、ヒナルは慌てた様子で
「ごめんなさい、ジョースケさんを勘違いさせる言い方をしてしまいした。正確には3時間ほど寝てたと思います。」
自分の切り傷ですらまだ塞がれていないのに、これよりももっとひどい傷が塞がったという事実が俺を混乱させるのであった。
異世界、俺だけ男性テクノストーリー。未来の技術でどこまでも なんよ~ @nananyo
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