ねぇ、褒めてよ

@aruarusu

ねぇ、褒めてよ

「おーい、ごめん、待った?」

嘘だろ、、、待ち合わせの時間の30分前に来たのにもう居るだと、、


「もぉ!待ったよ、、って冗談冗談笑 おはよう!柊くん!」

「おはよう、有栖」


今日はデートの日だ。なんだが久しぶりに会った気がする、、、これも付き合ったおかげか?


「にしても早いな。」

「えへへ、付き合って最初のデートかと思ったら張り切っちゃって、、」

「そ、そうか、、、」

俺たちは幼馴染だったのだがついに付き合い始めたのだ。誰だよ、幼馴染は恋愛出来ないって言ったやつ


ん?なんだ?なにやらキラキラした目でこっちを見てくる。

「ど、どうした?」

「服装、、、」

やべ!デートは相手の服装を褒めることから始まるってどっかの誰かさんが言ってたのに!

「すっごい似合ってるよ!!」

これは本音だ、、にしても今日って六月後半だよな

「えへへ、もっと言っても良いんだよ?」

無視した

「でも長袖って暑くない?大丈夫?」

「へ?あぁ、大丈夫だよ!」

「今日は私が行きたいところ行ってから柊くんの行きたい場所に行くって事で良いよね?」

「あぁ、そうだよ。ってことでまず有栖の行きたい場所からだね」

なにやら胸を張っている、、いや壁を張っ、、、、殺意に満ちた目で見てくる

「任せてよ!ここからちょっと歩こうか」

「分かった。、、、、手、手を繋がないか?」

「んー、、、ごめん、ちょっと無理かな、、、ごめん、、」

手を繋げなかった、、、なんで断られたのだろうか、、、距離がもしかして近すぎた!?そんなわけないか、、幼馴染の関係だけだった時も手を繋いでいたし、何か事情があるんだろうか


「着いたよ〜!!」

「ん?ここは?」

オシャンな雰囲気を感じるお店みたいな感じだ」

「カラオケだよ!」

「へぇ、カラオケか。俺歌える曲あったっけな?」

カラオケか、、、まぁ、歌える曲は何個かあるか


「いらっしゃいませー」

中もやはりオシャンな雰囲気だ。俺の偏見なんだが東京にボロいカラオケ店はないイメージだ

「こんな綺麗なカラオケ店ここにあったんだな。」

なにやらキラキラした目で見てくる、、あ、あぁ

「す、すごいなーこんな綺麗なカラオケ店を見つけられるなんてー、、あはは」

棒読みである

「そ、そう?えへへ、、」

単純である

「じゃあ受付も済んだし歌おうか!」


「どっちが先に歌う?」

「じゃあ私から、、」

アニソンを選択した。アニメを見ない俺ですら分かる有名な曲だ

「うまいな」

うまい、うますぎでしょ、、

「んふー!ありがとう!」

まぁ、このように褒められるのが有栖は好きなのだ。いや、誰でも褒められることは好きか、、じゃあ特に、だな

「じゃあ俺だな。」

俺がゆういつ観てるアニメのオープニング曲を歌う。つい一週間前から新しいシリーズがやり始めたからその曲を歌う。もちろん有栖も観ている

「あれ?このアニメこんなオープニング曲あったっけな?」

「あれ?ほら、新しいシリーズが1週間前からやり始めたじゃん」

「あ、そう。だったね!」

なにか違和感のある受け答えだったが気にしないどこう


「楽しかったね〜!!」

「あぁ、楽しかった」

しっかり三時間満喫した。久しぶりにカラオケに行ったが楽しいな」


「じゃあ次は俺の行きたい所、、の前にお腹空かない?お昼ご飯食べに行こうよ」

「うっうん」

「どこ行く?」

「どこでも良いよ〜」

どこでも良いが一番困るんだがな、、

「じゃあここのオムライス店なんてどうだ?」

「うん、そこで良いよ」


着いた、カフェみたいなとこだな

「メニューどうする?」

「あ〜、、私いらないかな?お腹空いてなくて、、あとダイエット中、、」

「え?食べないの?十分痩せてるのに、、」

俺だけ食べるって気まずくないか?

「うーん、、まぁ、とにかく私はいらないかな」

まぁ無理強いはさせられないしな「じゃあ頼むぞ?」


「美味しかった〜!!有栖も食べれば良かったのに〜」

「あはは、で柊くんの行きたいとこは?」

「俺は、、、行ってからのお楽しみだな!」

「期待しちゃうよ〜」


「ここだ!!」

ぱっと見ただのおしゃれな背の高い建物なのだが

「へぇ、ボルタリング、、ねぇ、、、、ナントカ、、、」

なにやらボソっと何かが聴こえるが気にしないどこう

「一回はやってみたかったんだよなぁ!!」

まだ一回もやったことないのである


「こ、ここ難しいよ!!ここからどうやって行くの!!」

有栖が悲鳴をあげている

「頑張れ〜!俺は出来たぞ〜!!」


「楽しかったな」

「楽しかったけど、、難しいよ、、、」

「さて、もうお開きする、、、前にまだ17時だから、、行きたい場所があるんだけど、柊くん、良いかな?」

「良いが、、どこ行くんだ?」

「それは着いてからのお楽しみ、、って言いたい所だけどいつものとこだよ」

あぁ、あそこか!


「着いたね。」

廃アパートの屋上だ。小さい頃からの俺たちの秘密基地だ

「どうしたんだ?改めてこんな所に来たいだなんて」

「特に何もないよ、ここで柊くんとゆっくりしたかっただけ」

「そうか、、じゃあのんびり喋っていようか、、」


「ただいま〜!!」

「.け....う..元気になって良かった......」

リビングからお母さんの話し声が聴こえるがまずは荷物を部屋に置いてこよう

「お母さんただいま〜誰と喋ってたの?」

「おかえり、友人とね」

「今日の夜ご飯なに?」

「カレーだよ。もうすぐできるから部屋からお父さんと紗季を連れてきて」

紗季という人は俺の妹だ

「りょうかーい」


『いただきます』

家族全員でそう言う

「そういえば今日お兄ちゃんどこ行ってたの?」

「え?あぁ、有栖とデートしてきた」

その瞬間空気が固まった、、ように感じた、、

「え?何かおかしい?」

「え?お兄ちゃん有栖ねぇとデート行ってきたの?」

「え?そうだが?」

その一言でもう一度空気が固まった

「お兄ちゃん、、有栖ねぇはもう、、」

「もう?なに?」

「有栖ねぇは亡くなったんだよ!!」

「は?え?」

その瞬間頭に稲妻が走った、、ように感じた、、

「なんで忘れてたんだろう、、」

そうだ、有栖は病気で死んだんだ、、それに落ち込み俺は、、引きこもりになったんだ

「ちょっと行ってくる!!」

有栖ならまだあそこにいる、、、なにか感じる、、

走りながらいろいろ考えた


だから長袖だったんだ

だから手を繋ぎたがらなかったんだ

だからアニメが新しくやってたことを知らなかったんだ

だからご飯を食べたがらなかったんだ

だから、、、久しぶりに感じたんだ


屋上のドアを勢いよく開ける

「有栖!」

「待ってたよ、柊くん」

「どうして、、、」

「うん、いろいろ疑問はあると思うから一つずつ答えて行くよ」

「なんでここに居るんだ?」

「それは、、、私にも分からない、気づいたらここに居た」

「なんで俺に黙って、、」

「、、ごめん、、言おうとは思ってたんだ、ただ思ったより病気の進行が早くて、、言う暇がなかったんだ、、」

「どうして!!どうして!!有栖が!!!」

嗚咽混じりに叫ぶ

「死なないでよ、、、ねぇ!!まだ居れるんだよね!」

「残念だけど、、もうあんまり持たないかな、、それだけは分かる」

「なんで有栖が、、やめてよ、、」

「ねぇ、笑ってよ、私は柊くんの泣いてる姿見たくない」

無理やり笑った。

「こ、これで良い?」

「ゆっくり喋ろうよ。これまでのことをさ、それくらい時間はある」

それから俺たちは心ゆくまで喋った。泣きながら、笑いながら

「もうすぐ、、だね、、最後にお願いがあるんだけど良いかな?」

「うん、、良いよ」

「ねぇ、褒めてよ、、病気と最後まで闘ったんだよ、それくらい良いよね」

「あぁ、、よく頑張ったな、、本当に、、有栖はすごいよ、、本当に、、俺の誇りだ、、」

「えへへ、そうでしょ?うん、もう私の悔いは無くなったかな、柊くん、私が居なくなっても引きこもりにならないこと!私に引きずるのは良いけどちゃんと前を向くこと!ってなんか恥ずかしいな、、」

「うん、、うん、、」

有栖の体が透け始める

「うん、もう最後だね」

「ありがとう、、有栖、、大好きだよ!有栖」

「うん!柊くん、私も、、大好き、、」

居なくなった、居なくなってしまった、その瞬間

「うあああああああ!!!」

大好き!大好き!大好き!!生まれた時から!!15年間!!


それからしばらく泣いた、叫んだ。疲れて家に帰るとお母さんしか居なかった

「お別れしてきたんだね」

それだけ言うとお風呂に行ってしまった


寝るか、、、

「大好きだよ、有栖」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あっついな、、」

7月中旬だからそろそろ蝉も本格的に泣き始める頃だから当たり前か

「にしてもなんでここの階段こんなに長いんだよ、、」

「ふぅ!やっとついたぁ、、おはよう、有栖」

「有栖のお墓に水を撒く

うん、有栖おはよう、あれから俺はちゃんと立ち直ったよ。有栖が出てきてくれたおかげかな?そっちの世界はどうかな?楽しい?そっちの世界に居るのも良いけどたまにはこっちに来てよ笑 寂しいよ笑 今日のお供物はなんと限定アニメCDだよ。苦労して手に入ったんだからちゃんと楽しんでね。

「ふぅ、言いたいことは全部かな?」

......褒めてくれないの?.......

確かに有栖の声が聞こえた。

は、そうだな、忘れてたよ。前回褒めた時は病気に対することだけだったね

改めて言うよ、ありがとう、と全くお前はすごいよ、俺をここまで落ち込ませるんだからな。俺がここまできたのも有栖のおかげでもあるんだからな。胸張れよ。

涙がぽろぽろ溢れてきた。今までの思い出を思い出しながら

でも泣いてちゃダメだよね。笑うよ、気持ち悪かったらごめんね。泣きながら笑うって言うのがなかなか難しいんだ笑

うん、今度こそ言いたいことは言えたかな、また近いうち来るよ。

........大好きだよ、柊くん.......

「あ、あぁ!そうだな!」

「大好きだぞ!!有栖!!」

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