愛してるよゲームLv99

@NEET0Tk

愛してる

「愛してるよゲームって知ってるか?」

「何それ?」

「交互に愛してるって言って、照れた方が負けっていうゲーム」

「へぇ、面白そう」

「やる?」

「うん」


 二人の幼馴染は愛してるよゲームを始めた。


「水樹」

「なぁに?」

「愛してる」

「私も」


 静寂が包む。


「やっぱり付き合いが長いせいか中々難しいな」

「そうだね」


 二人は頭を悩ませる。


「あ!!分かった!!」


 水樹は何かを思いつく。


「多分、私と翔君はお互いを知りすぎてるんだよ」

「確かにな」

「だから変化が足りないと思うんだ。いつもと違った場所や、いつもと違う様子や台詞、色んなものを駆使すればきっと決着がつくよ」

「うーん、そう言われると難しいな」


 翔太は頭を悩ませる。


「例えば」


 水樹は翔太の手に触れる。


「愛してるよ、翔君」

「うお!!」


 翔太の声が上がる。


「確かに少しドキドキした」

「でもまだまだ照れる感じじゃないね」

「そうだなぁ、やっぱりもっと大掛かりにする必要があるのかもな」

「よーし、じゃあ明日、私の本気の愛の告白を見せるよ」

「いいだろう。俺も本気で水樹を照れさせてやる」


 そうして幼馴染二人の愛してるよゲームが始まったのだった。


 ◇◆◇◆


「おはよう翔君、朝だよ」

「う〜ん」


 太陽の光が翔太を眠りから起こす。


「ん?水樹か?」

「そうだーよ!!」

「う!!」


 翔太の上に水樹はダイブする。


「お目覚めかな?」

「まぁな」


 後数センチで唇が触れそうな二人の目が交差する。


「愛してるよ、翔君」

「俺もだよ、水樹」


 小鳥の鳴き声が響く。


「う〜ん、反応薄いな〜」

「眠過ぎて反応できん」

「おろ?」


 翔太は大きな欠伸をし、水樹を持ち上げ、地面に下ろす。


「とりあえず朝飯食おうぜ」

「そうだね」


 そのまま二人は階段を降りていった。


 ◇◆◇◆


「ありがとう、水樹ちゃん。翔太はそろそろ自分で起きれるようになりなさい」

「あいよー」

「あ、私手伝いますね」

「あら、ありがとう水樹ちゃん。ほら、翔太は顔でも洗ってきなさい」


 ボサボサになった髪を掻きながら、翔太はトボトボと歩いて行く。


「ホント、あの子はいつになったらしっかりするのやら」

「でも私翔君を起こすの好きですから、気にしないで下さい」

「はぁ、ホントに良い子。いつ翔太のお嫁さんになってくれるの?」

「え?私はーー」

「おい」


 急に水樹の体が後ろに吸い寄せられる。


「そういうのは他人が言うもんじゃなくて自分から言うべきだろ」

「翔君?」


 濡れた髪の間から見えるのは、普段の気怠気な目ではなく


「愛してる、水樹」

「翔君……」

「え?え?ホントに?ついにお母さんの願い叶っちゃうの?」


 大慌ての翔太ママに反し、二人の間にあるのは静寂。


 そして


「翔君、ちゃんと髪拭いて」

「めんどくさい」

「もう!!タオル持ってくるから待ってて」


 洗面所に走って行く水樹。


「え?あれ?返事は?」

「まぁそう簡単じゃないよなぁ」


 翔太は軽く頭を掻く。


 二人のゲームはまだ始まったばかりである。


 ◇◆◇◆


「行ってきまーす」

「行ってくる」


 二人は家を出る。


 眠そうにする翔太と、鼻歌交じりに歩く水樹。


「楽しそうだな」

「やっぱりこういう刺激があると楽しくなっちゃうからね」

「そりゃよかった」


 翔太は静かに笑う。


「今言われたら危なかったかも」

「ん?何がだ?」

「ううん」


 翔太は不思議に思う。


「さて翔太さん」

「なんだね水樹ちゃん」

「水樹ちゃんってなんか新鮮だね」

「おい水樹ちゃん、本題を話すなら話せ」

「翔太はせっかちだなぁ」


 水樹は後ろ向きに歩く。


「実は私はこれからの道中で数々のトラップを仕掛けています」

「普通そういうのって隠しとくもんじゃないのか?」

「ノンノン、これはあくまで消化試合。本気と必殺技を出すのはいつだって最後なんだから」

「なるほどな」


 そして翔太は水樹の手を握る。


「およ?」


 そして手を引き、壁にぶつかるそうになった水樹の歩く向きを変える。


「愛しの水樹に怪我でもあったら大変だからな」

「ちょっとキザ過ぎない?」

「調整が難しいな」

「でもありがと」

「どういたしまして」


 それから水樹の宣言通り


「猫……の人形?」

「ほら!!そこにしゃがんで!!」


 水樹の言う通りに猫の前でしゃがむ翔太。


「お前も……一人ぼっちなんだな」

「きたぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 嬉しそうに動画を撮る水樹。


「普段は気怠気な翔君が、実は猫には優しいというギャップと、ヤンキーが良いことしたら良く見える効果の二重パンチ!!これは売れるね!!」

「はぁ、水樹お前な」


 翔太はめんどくさそうに


「俺はお前にも優しくしてるつもりだったんだけどな」

「おぅ」


 水樹が面食らう。


「今のは効いたけど、私を唸らせるにはまだ早いよ?」

「お前は誰なんだよ」

「次!!」


 暫く歩いていると


「あれ?どこ行ったんだ?」


 水樹を見失う翔太。


 見失ったというより逃げたの方が正しいのかもしれない。


「まぁどうせ何かするんだろ」


 幼馴染への理解が高い翔太。


「ん?」


 翔太は気付く。


「何してんだ?」


 カーブミラー越しに、曲がり角で待機している水樹。


「そういうことか」


 翔太は歩く。


「きゃ!!」


 最早芸風と化し始めているあの現象が起きる。


「いったた」


 わざとらしく痛がる水樹。


「大丈夫か?」


 翔太が手を伸ばす。


「う、うん。ありがと」


 そして翔太が水樹を引き起こすと


「うお!!」

「あ」


 水樹が翔太の胸の中に飛び込む。


「ご、ごめん。立ちくらみが……」

「いや、気にすんな」


 軽く抱き合う形になる二人。


「どう?」

「何が?」

「ドキドキした?」

「ドキドキはしたが、これは愛してるよゲームなのか?」

「違うよ翔君。こうやって何かハプニングを起こすことで、多分なんかいい感じの結果が生まれるんだよ」

「そういうもんか?」

「そういうもん」

「そうか」


 そして翔太は水樹を剥がそうとするが


「ん?どうした?」


 水樹は離れない。


「もう少し、大好きな翔君とこうしてたいの」

「お、おう」


 少したじろぐ翔太。


「今のは危なかった」

「むふふ、凄いだろー」


 自慢気な水樹。


「俺も負けてられないな」

「そうこなくっちゃ」


 ◇◆◇◆


「お前らどうしたんだ?」


 一人の男子生徒が驚愕の声を上げる。


「ん?水樹やっと付き合ったの?」

「え?なんの話?」

「翔太もやっとか」

「何がだ?」


 クラス中の視線が集まる。


「まさかと思うが、それを付き合ってもない男女がすると?」


 翔太は水樹をお姫様抱っこし、水樹は翔太の首に手をかけている。


「これじゃあまだまだだろ?」

「翔君強すぎるよー」

「何?お姫様抱っこってそんな軽いものだった?」


 翔太の友人は動揺する。


「だってほら」


 水樹の顔が翔太に近付く。


「水樹!!」


 キスするのではとクラス中が騒つく。


「愛してるよ」


 水樹が囁く。


「俺もだ」


 翔太が答える。


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 女子の黄色い声が上がる。


 だが


「お、お前ら良く平然としてられるな」


 水樹と翔太は共に渾身のキメ顔を作っている。


「うーん、やっぱりダメだなー」


 水樹は残念そうに降りる。


「翔君!!次こそ倒すから!!」


 そう言って水樹は友人の女子達の元に走って行く。


「俺は敵か何かよ」


 翔太は大きな欠伸をし、昼寝を始める。


「え、怖ぁ」


 翔太の友人は恐怖した。


 ◇◆◇◆


「へぇ」

「愛してるよゲームね」


 水樹の友人である真子と翔太の友人である啓太は同時に二人の現状を知る。


「お願い真子ちゃん。協力して?」

「そりゃ水樹の頼みなら当然受けるけどさ」

「あの水樹さんを照れさせるなんて出来るのか?」

「だから俺も困ってる」


 真子と啓太は頭を悩ませる。


「水樹さんと言えば学校一の美少女で有名だ。学校中のあらゆるイケメンの告白を全て蹴ってきた」

「そんな翔太を水樹のその顔と性格で落とせないなら私じゃどうにもならないよ?」


 二人は同じような結論を出す。


「え?私って」

「そんな人気だったか?」


 無自覚な二人が同じ反応を返す。


「いやどう見てもお前はイケメンだろ」

「うーん、あんま鏡見ないからな」

「私メイクとかあんまりしないから……」

「それでその顔は反則でしょ」


 幼馴染だからか、はたまた似たもの同士だからこそ仲良くなれたのか、二人はどこか似ていた。


「とりあえず他の人で試してみよう」


 慶太は提案する。


「水樹は許してくれたが、他の女子には流石に気持ち悪くないか?」

「凄いな。さっきまでお姫様抱っこしてた男とは思えん」


 啓太は近くに通りがかった女子を引き止める。


「悪いけどこいつと愛してるよゲームしてくれるか?」

「え!!翔太と!!いいの!!水樹に怒られない?」


 翔太は水樹の方を見る。


 すると水樹は不思議そうな顔をする。


 翔太が顎で啓太を指すと、水樹はウインクしながらオッケーポーズを取る。


「いいってさ」

「え、何お前らアイコンタクトで会話できるの?」

「夫婦どころの騒ぎじゃないでしょ」


 少し気圧される女子であったが、欲望に勝てなかったのか椅子に座る。


「じゃあ俺からな」


 翔太はゆっくりと顔を上げ


「愛してる」


 すると


「私もです」

「カーット!!」


 啓太が止める。


 完全に女の子の目がハートになっている。


「分かる?」

「水樹よりも弱い」

「違う!!お前が強すぎるの!!」


 啓太が力説するが、翔太はよく分かってなさそうに首を傾げる。


「向こう楽しそうだね」

「いやそういう話じゃないから。水樹はもう少し自覚して?」

「でも翔君は……」

「怪物同士で比べないで!!」


 真子は近くにいた男子を引き止める。


「光栄にも、あなたは水樹と愛してるよゲームをできる権利を得ました」

「マジで!!」


 男は飛び跳ねそうな程喜ぶ。


「うんうん、分かるよー。このゲームの奥深さは一度ハマると抜けられないんだよね」

「いやこいつは水樹と愛してるよゲームできるから喜んでんの。愛してるよゲーム自体に重きを置いてる人間いないからね、普通」

「よし!!じゃあいくぜ!!」


 元気満々な男は水樹の目を見る。


「……?」

「ちょ、ちょっと真子」

「何?」

「可愛すぎる」

「もう負けてるからそれ」

「待て!!」


 男はもう一度水樹を向き直す。


「水樹」

「うん」

「俺」

「俺?」

「俺は!!」

「おう」

「水樹が好きだ!!」


 既に顔が真っ赤の男子生徒だが


「私も」


 相手が悪すぎた


「君のこと、愛してるよ」


 カウンターパンチを食らった男子は


「はい、試合終了」


 真子の手によってノックダウンされる。


「真子ちゃんの空手はさすがだけど、どうして叩いたの?」

「クラスから犯罪者を出さないためだ」

「?そっか」

「はぁ」


 苦労人の真子はため息を吐く。


「そもそも愛してるよゲームって、確か言われたら『もう一回』とかでリピートさせるはずだよ」

「え?そうなの?」

「まぁ水樹相手にそんなことされる暇なんてないだろうけどね」


 真子は悩まし気に答える。


「でも、真子ちゃんが伝えようとしたことは確かに分かったよ」

「ホント!!」

「うん!!」


 水樹は自信満々に


「翔君はやはり強敵だってことだね」

「いや合ってるけど、今話してるのはそこじゃなくて」

「なぁ逆に見せてくれよ」

「何がだ?」


 諦めた啓太は、翔太に聞いてみる。


「とりあえずお前は水樹さんを照れさせたいんだろ?」

「そうだ」

「ならお前が今やってるのを見せてくれ。それ以上の方法を考えるから」

「分かった」


 翔太が席を立つ。


「水樹」

「どうしたの?翔君」


 何故か正拳突きの練習をしていた水樹の場所に行った翔太は


「おん?」


 壁ドンする。


「愛してるよ、水樹」


 クラス中が息を呑む。


「翔君」


 翔太の首に手をかける水樹。


「もう一回」


 皆が呼吸を忘れる。


 翔太は水樹の顎を持ち上げ、顔を寄せる。


「愛してる」

「ストーップ」


 啓太が止めに入る。


「他所でやれ!!」

「どうだ?何か分かったか?」


 翔太と水樹は同じ体制のままでいる。


 その姿は一枚の絵画のようであったが、ここは美術館ではなく学校であった。


「ああ、分かったことがある」


 啓太の代わりとばかりに


「それ以上は無理!!」


 真子が答えた。


「翔君、どうやら私達はこのゲームでかなり上級者になったみたい」

「俺は誰もまだ誰も知らないゲームの攻略法を見つけるのが好きなんだ」


 ゼロ距離で笑い合う二人を


「かいさーん」


 真子と啓太は疲れた様子で見捨てた。


 ◇◆◇◆


「翔君あーん」

「美味い」


 二人で昼食を食べる。


「うーん、やっぱり彼氏とか出来たことがないからドキドキさせる方法が分からないよ」

「俺は少女漫画を参考にした」

「通りでベタなのが多かったんだね」

「水樹は?」

「私は少年漫画」

「曲がり角でぶつかる少年漫画があったのか?」

「うん。あそこで敵だと気付いた二人が戦いを始めるんだよ」

「熱いな」


 そんな二人の様子を


「おかしいだろ」

「おかしい」


 啓太と真子は眺める。


「何で水樹さんは翔太にあーん、してるんだ?」

「普段水樹は私達と食べるけど、二人の時はいつもああらしい」

「それで」

「付き合ってないらしい」


 二人は困惑する。


「世のカップルは何をしてるんだろうな?」

「きっと凄いはずだよ。私達なんかじゃ想像つかないような」

「凄いな、カップル」


 水樹が翔太の肩に寄り添い、翔太は水樹の頭を撫でる。


「そりゃ想像つかんだろ!!」

「越えるんだから!!」


 二人はキレた。


「あれって付き合って結構経った熟年ラブラブカップルに許された奴だよな!!」

「知らないよ!!私彼氏できたことないから!!」

「俺もだよ!!」


 何故か喧嘩が起きた。


「翔君は最後にいつ照れた?」

「そうだな」


 翔太が思い返す。


「三日前に水樹に間違って服を反対に着てたことを指摘された時。水樹は?」

「私はこの前テストで百点取って、翔君に褒められた時かな」

「だけどあれは凄い。さすが水樹だ」

「えへへ、ありがとー」

「何だあの優しい世界は!!」

「私だって誰かに褒められたよ!!」


 外野の沸点は上昇していく。


「だがこれは愛してるよゲームで勝ったとは言えん」

「そうだね。やっぱり好きって気持ちで照れさせなきゃ」

「その通りだ」


 昼食を食べ終わり、二人は立ち上がる。


 そこにあったのは


「次で仕留める」

「負けないよ!!」


 睨み合う二人と


「「お腹いっぱい」」


 胃もたれした真子と啓太であった。


 ◇◆◇◆


「じゃあ」

「そういうことで」


 放課後二人はそれぞれ別の道を行く。


 夜の8時。


 そこで二人は最後の決着をつけることにした。


「最高の舞台」

「最高の状況」

「最高の言葉を持って」

「最高の仕草で」

「必ず」

「伝える」

「「この言葉を」」


 そして指定された時刻となる。


「綺麗だよ、水樹」

「翔君もカッコいいよ」


 お互いの姿を褒め合う。


「結構高かったんだよねー」

「俺もだ。普段から小遣い貯めておいてよかった」

「翔君ゲーム以外買わないもんね」

「そうだな。だから今日は少し豪華に」


 二人はレストランのあるビルに向かう。


「よく予約できたね」

「まーな」


 二人で手を取り合って中に入る。


「どうしよう翔君。作法が分かんない」

「俺もノリでここまで来たからよく分からん」

「お揃いだね」

「そうだな」


 その後の二人は周りの目も気にせず、楽しそうに食事を楽しむ。


「ここでフラッシュモブでも呼べればよかったが、残念ながら俺にはその力がない」

「それは逆に照れるより驚きの方が勝っちゃうよ」

「それもそうだな」


 翔太は立ち上がる。


「実はここ、屋上に行けるらしい」

「もしかして」

「行くか」

「うん!!」


 二人で屋上へと向かう。


「すごーい」


 街中を光が包み込んでいた。


「一介の高校生である私達には些か豪華すぎやしませんか?翔太さん」

「俺も途中でやらかしたと思ったが、なんか母さんがいつの間にかお金おいてて引くに引けなくなってた」

「ありゃま」


 冷たい風が二人を責める。


「ん」

「ありがと」


 気付いた翔太は自然と水樹の肩を寄せる。


「もうすぐだ」

「お!!まさかぁ」


 街の中心にある塔がライトアップする。


「綺麗」


 水樹が感嘆の声を漏らす。


「今俺が言いたいこと分かる?」

「私の方が綺麗って?」

「そうだ」

「やっぱりベタだねぇ」

「少女漫画は最強だ」


 そして自然と二人は互いに向き直る。


「愛してる」

「私も、愛してるよ」


 ……


「「ぷっ」」


 吹き出し


「「あははははははははははははははははは」」


 笑う。


「いやー、もう狙い過ぎてて正直笑いを堪えるのに必死だったよ」

「俺もだ。計画を練ってる時は完璧だと思ってたが、いざやるとベタすぎて面白くなっちまった」


 どうやら二人の愛してるよゲームはここで終了のようだ。


「帰るか」

「うん」


 ◇◆◇◆


「あ、翔君。あの公園」

「懐かしいな」

「少し遊ぼう」


 夜の公園に少し楽しくなる二人。


「見よ!!私の必殺座り漕ぎ!!」

「おお、全然動いてないや」


 ブランコ


「狭くね?」

「速く行くんだ翔君」


 滑り台


「掘ったらどこまで行くかやったな」

「答えは木の根っこだったね」


 砂浜


「謎にテンション上がったな」


 遊び疲れた二人はベンチに座る。


「うーん、今日はホントに楽しかったー」


 水樹が楽しそうに笑う。


「そうだな」


 翔太も同じように笑った。


「……」

「……」


 静かになる。


「なぁ水樹」

「なぁに?」

「どうして俺が愛してるよゲームを聞いたか分かるか?」

「んー、分かんないなぁ」

「そうか」

「えー、答えはー」

「答えはな、水樹に告白するのに緊張しないためだ」

「……」

「愛してる」


 目が合う。


「小さな頃から、ずっと好きだった」

「……」


 ポタリ


「水樹?」

「先に」


 水樹は大粒の涙を零す。


「言われちゃったな」

「水樹」

「せっかく決めてやろうと思ってたのにさ、先に言われちゃったよ全く!!」


 泣きながら水樹は笑う。


「ねぇ翔太君」

「何だ」

「もう一回、言ってくれる?」


 翔太は笑い


「何度でも言ってやるよ」


 向き合う。


「愛してるよ、水樹」

「私も、愛してるよ、翔太」

「俺の勝ちだな」

「えぇ、私の勝ちだよ」

「じゃあさ」

「これで決着だね」


 街灯に照らされた二つの影が


 重なった。

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