第5話 御園診療所 【5】

警察署で簡単な事情聴取を受け、解放されたのはもう朝方だった。

人気の無い警察署のロビーに出る。


「・・・。先生?」


「葵!大丈夫だったのか?怪我してないか?」


御園が葵に近付いた。


「待っててくれたの?大丈夫だよ。それより、協力してくれてありがとうね。レイア達は?」


「ああ、大丈夫だよ。皆、警察に保護された。」


「そっか・・。良かった。」


葵がワゴン車を奪った後、御園と待ち合わせていた。

そこで女性達を降ろし、御園の手によってレイアを含め8名の女性達は警察に出頭し保護されていたのだ。


「葵に感謝してたぞみんな。あの地獄の様な所から救ってくれたって。」


「彼女達の心は深く傷付いてる。簡単には癒えないでしょうね・・。日本に来たせいで辛い思いをさせちゃったね。」


目を伏せてポツリと言った。


「それでも、彼女らは笑顔だったよ。大丈夫だ。彼女達は強い。きっと乗り越えるさ。」


「だと、いいけど・・。」


「それより、葵は随分早く解放されたな?大丈夫だったのか?色々聞かれただろ?」


「うん・・。まぁ、その辺は大丈夫だよ。根回ししといたから。」


「・・・。そうか。なにはともあれ解決・・だな?」


「そうね。」


「じゃあ、帰るか。行くぞ。」


「行くって、どこに?」


「何言ってる。診療所に決まってるだろう!朝食位食べていけよ。」


「ふふっ。うん!」


警察署を出ると、白白と夜が明けていく。

朝の爽やかな空気を思いっきり吸い込んだ。





✻✻✻✻✻✻✻✻





1ヶ月後、レイアは御園診療所に居た。

オーバーステイの件は、事情が事情だった為に特例として残留資格が得られたのだ。


「もう新しい仕事には慣れたか?」


「マダ、シッパイシチャウ。デモ、ミンナイイヒト。」


「そうか。良かったな?他の女の子達はどうしてる?」


「ミンナ、ゲンキ。アタラシイシゴトガンバッテル。」


「・・・。皆、強いな。」


「ウン。マケナイ。アオイニ、ユウキモラッタ。ニホンニキテヨカッタ。・・・アオイニアイタイ。」


「そのうち会えるよ。今は色々と忙しいみたいだからな。」


「センセ、アリガト。」





その頃葵は。


「色々協力して頂いて有難う御座いました、三井さん。」


『いいえ。少しでも彼女達の力になれたなら良かったですよ。』


「住む所も仕事も紹介してくれて本当に助かりました。私はまだ日本に来たばっかりで何のツテも無かったので。」


『世良さんは観光で日本に?』


「いえ。仕事で・・。」


『それでは、また帰るのですか?』


「・・・。暫く日本に居ようと思ってます。」


『そうですか。では、何か困った事があったら言って下さい。世良さんにもお礼をしないといけませんから。』


「ありがとうございます。その時は宜しくお願いします。」


電話を切るとため息を吐いた。

客室の窓を眺めると見慣れた景色が広がっていた。


「もう一つ日本に居る理由が出来ちゃったな・・。」


呟かれた言葉は誰に聞かれる事なく消えていった。

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恋と瑠璃色の弾丸 〜番外編〜 朔良 @sakura1559

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