最終話

 AM 04:00

 あと1千万円のところまできた。その時にどうやっても引き出せなくなった。

「これで終わりなのか」

「サイバー警察との時間勝負。もう無理かな」

「撤退するわ」

「ああ」

「そうね。これ以上は危険だわ」

 さらに解析させにくくするために今までの痕跡を消していく作業に専念する。

 


AM06:00

 保身も完全に終わったようだ。

「これで完璧に追ってはこられないわ」

「お世話になったわね。ケイミ―」

「本当に今回は肝が冷えたわ」

「いろいろと計算しなおして改めて請求するから」


 彼女は目が疲れたといって帰っていった。

「後日、億くらいの請求は覚悟氏は法がいいかもしれないな」

「私たちも引き払うかね」

「あまり早くチェックアウトすると記憶に残りやすいわ。バイキングなんですって個々の朝食。食べましょ、あ、その前にお風呂ね」

「ああ」

 何時間もパソコンに向かいっぱなしで

自分の滴る汗にも無頓着で作業していたのだ。


 個室でふろを済ませ、バイキングへ向かう。

 ぎりぎりで間に合った。

 時間的に堪能している時間はないが、

 フルーツが余っていたのでいただくことにする。

 メタボ気味の夫にはご飯とみそ汁を進めてみた。

 みそ汁は飲んでも、ステーキのような肉やら脂ののったサーモンやらを皿に盛る。

 脳みそを使ったから仕方ないと今回は許すことにしようと思う。



 ☆☆

 夜中、目覚めた雨宮が自分の体を確認し、異常ないことがわかると警察を呼んだ。

「盗みに入られた。実行したのは従業員だ」

 警察、社長を呼んだ。

 近くの病院に急患で聞けるか確認をとる。状況説明したらタクシーで向かう旨を伝え電話を切る。

 警察立ち合いのもの、金庫の確認する。

「紙の束じゃないか」

 社長は茫然自失となっていたが、自分は何かの薬品をかがされている。

 社長の様子も心配だが、自分の体も心配だ。

 タクシーに連絡したのだった。


 ☆☆

「これはサイバー対策班の出番ですな」

 鑑識班は雄判断するしかない。

 手袋をしての犯行、犯人は3人かもしれないが、みな、同じサイズ、同じ靴跡をしている。

 男か女かの区別もつかない。ユニセックスという男女どちらでも着用できるというものだ。

 ついている歩幅が違うから3人かもというだけで確証はない。

 社長から預けてある金額を引き出されるかもしれない。

 と証言があった。

 確かにたてつづけに引き出されている。

 銀行に行って支払いを辞めてもらえたのが日が昇るころ。

 様々な回線を経由して別の口座で引き出せる限度額、ぎりぎりで別の口座へと移っている。

 もちろん回線も別口。

 こうなると、支払い停止機能は動かない。

 サイバー対策課全員で問い詰めた結果、やっと引き出し停止に成功したが、損失は大きすぎる。ほとんどの資産を失ってしまった。

 愕然とする社長が哀れでならなかった。



 2日後には大々的に報道された。

「ファントム・ウーマン」またまた犯行成功!! 日本警察遅れをとりもどせるか?

 テレビ、新聞、週刊誌、ラジオ、SNSなどの媒体がこの話題で持ちきりだ。


「ふふ。これでまた不正が明るみに出るといいわね」

「ああ」

 そして今回の功労者、ケイミ―の感謝祭の真っ最中だ。

 温泉巡りだ。外国人のケイミ―には足湯、たくさんの温泉は見たことがないという。


「うれしいわ。報酬以上にこんなに魅力的な場所に連れてきてくれるなんて」

「いいでしょ? あなたの好きな場所をリサーチしてみたの」

「今度もよろしくね」

「ええ。報酬いただけるなら喜んで」


 まだまだ契約は切れそうにない。

 義賊はいるものだ。形を変えて、呼び名を変えて。

 あなたの周りにもほら、いるかもしれない。


 END

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ファントム・ウーマン 完 朝香るか @kouhi-sairin

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