9 作戦開始
10月31日PM20:00
潜入開始だ。
暗視スコープとケイミ―のおかげもあって体を横にしたりしゃがみこんだりといった動きでセンサーを交わしていく。
通路を過ぎ、応接間を過ぎ社長室までは順調にいった。
(ケイミ―のおかげでかなり楽だわ。あと少しで金庫の前につく)
一番きわどい場所を済んだとたん、パチンと明かりがついた。
「見つけたぞ。観念するんだな」
雨宮聡だった。
長身の彼に扉をふさぐように立たれてしまい、逃げ場がない。
「今警察を呼んでやる」
「そうはさせない」
催眠ガスをまいて雨宮の意識を奪った。そうしたら赤外線センサーに彼がかぶってしまう。高身長の彼を160そこそこしかないマダム・ファントムがどうやって防ぐとこができようか。
(無理っ)
彼は床に倒れたが、なぜか警報はならない。雨宮が自分で捕まえようと思い、切ったのかもかもしれない。しかしどこまでの装置を解除したのかわからない。
「なぜ」
無線の向こう側の夫は冷静に分析したようだ。
『どうやら故障のようだ。赤外線センサーはまだ生きているものとして行動してくれ』
「助かったわ。これで集中できるかしら。まだ警報装置も警察もまだのようだわ」
「そちらのパソコンからはどう?」
「警察や外部に連絡した様子はない」
ファントム・ウーマンも雨宮の携帯をポケットから取り出し、通話履歴、メール送信履歴を調べている。問題はないようだ。
センサー自体を切れればいいのだが、切った時間だけ履歴もパスワードも指紋認証者も登録しなければならない。
誰も殺さないという主義のため、指紋認証者が用意できなかったのだ。
金庫の前までは進んでこられた。
不正の証拠とあるだけの金品を狙うのだ。
金庫の重量センサーには時間差があり0.5秒ほど測定できなくなるラグが存在する。
資料をギリギリまで引き出して厚みと重さをはかる。
枚数や袋などの重さは幸いにも1キロにも満たない。
ケイミ―になるべく重いものは入れないように、金庫の中身を完全にコピーしてもらった。用紙自体は白紙だが、紙の分量自体は同じというわけだ
860グラムだった。交換しても作動することはなかった。重量センサーが初期のころの代物だったころの商品だからできる荒業だ。
これが一番の賭けだった。
もっとずっと性能の良い機械を採用されていたら逃げるしかないところだった。
これから退去しなければならないが、雨宮が邪魔だ。どうしようか思案した時、ケイミ―の声がする
「こっちよ。窓から出られるわ」
「助かるわ」
「報酬は追加でもらうわよ」
「ハイハイ」
ケイミ―と夫のおかげでなんとかこなすことができた。
今回の計画はケイミーの情報と行動ですべてが決まったといってもいい。
夫もうまく監視カメラの映像を細工して映らないように退散することに成功した。
「屋敷ではまだまずい。324ホテルの15階、1502号室にてまつ」
夫へ連絡して、ケイミーにも遠回りして向かってもらう。
「書類も銀行の暗証番号もカードもあるわ」
「遠隔操作で引き出せるかしら」
「暗証番号もわかるわ」
ファントム・ウーマンはため息をつく。
「また料金追加ってわけね」
「今回に関しては行動力がないわね。よろしくね」
ホテルに着くと自前のPCで作業だ。
海外のサーバーをいくつも経由させ解析できないようにさせていく。
日本からアメリカ、イギリス、フランス、ドイツにスイス。
「できたわ」
「番号は?」
「3939。サンキューサンキューって覚えろって社長が」
ふざけた暗証暗号だ。
「本当にあっているの?」
「いいからクリックしてみて」
あっていた。どこまでおめでたい管理者なのか。
「全額引き出し決定ね」
入金されている金額の桁が見たことがない。
「――兆って単位を見ることになるとは思わなかったわ」
「面白かったわ。今回の潜入現場」
思っていたよりも高額なため一括で引き出すことはできないようだ。
30回以上に分けないとうまく引き出せそうにない。
経由回線をその都度変更しつつの作業溜めかなり時間がかかる。
見つかってしまうだろうが、できるだけ引き出していく。
夜通しの徹夜の作業になりそうだったが、そうはならなかった。
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