8社長とファントムの攻防
「どうだね。雨宮君。ここのセキュリティは万全だろう?」
「ええ。完璧です。厳重過ぎて電気代がもったいないくらいです」
「はっはっは。そうだろう、そうだろう。
じゃあ1台位くらい省いても支障ないな」
「ええ。試してみましょう」
「いいだろう。3台くらい切ってしまえ。
もったいないは確かにそうだ。倹約倹約。はっはっは」
調子のよい社長のおかげで道が開けた。
「社長、ファントム・ウーマンの件もあります。
しばらくはこのままにしておいたほうが」
「あんなものどうだってよいわっ!
ただの脅しだろう」
社長は雨宮の訴えを一蹴した。
正直とても助かる。
社長が馬鹿で。
社長の言葉通り3台機械停止することにした。
通路のセンサーを1つ、給湯器近くのセンサーを一つ、
そして金庫近くのセンサーを切った。
駒は揃えた。データも見取り図も準備は完了した。
後はマダム・ファントムに託すだけ。
「ヘマなんてしないでよ。
こんな会社の奴らに人生めちゃくちゃになんてされてたまるもんですか」
潜入時の履歴書を回収し、顔写真も保存した。
これがないとまた変装時レパートリーに困るのだ。
再び変装するにしても、日本人として潜入するにしても。
「お疲れ様。鈴木なおこ。また貴方にならないことを願うわ」
偽名にサヨナラだ。
☆☆
10月31日。
ハロウィンの夜。
ファントム・ウーマンのステージ開幕だ。
「さて、私の出番ね」
トレーニング室の中でひとり呟く。人間は20歳をピークに老いていくもの。
入念にストレッチと筋力トレーニングでしなやかな肉体を保っている。
鈴木もといケイミ―がよくやってくれた。
後は私がミスをしないことだけ。
「へぇ、よくこんなにもセンサーを動かせたわね」
役目を終えたケイミーと電話中。
『まったく。苦労したんだから。配属された部署激務だったし、2,3か月で信頼勝ち取るの大変だったわ。でも疑われているかもしれないから慎重に行動してよね』
「感謝するわ。ではうまくいったら報告するわ」
「旦那さんによろしくね」
「ええ」
潜入時の身体にフィットしたデザインに身を包み、入念にストレッチをしながら、赤外線センサーの位置と感覚を頭の中に叩き込む。
「一番小さい場所で14.5センチか。ギリギリね」
扉を14.5センチに設定してギリギリ通る感じだ。
腰に様々な道具を身に着けるために持ち物をしまう場所を工夫しないとならない。
これをスピーディーに行い、金庫までいかないといけない。
そのあとも金庫の重量センサーがある。気が抜けない現場である。
夫は警備員として入ってもらっている。
これは警備員を眠らせて入れ替わった形だ。
暗視スコープも性能が良いものを選んだし、あとは勝負だ。
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