栄光に向かって走るあの列車に乗っていこう

@tsuruya00772233

糖質

糖質が社会問題になり、糖質制限法が公布、施行されたが、それは逆効果であった。禁止された事により糖質消費量は以前よりも増えたのであった。いわゆる、カリギュラ効果と呼ばれるものである。世田谷区に所帯を持つ、未亡人の美智子は、一人で家事を切り盛りすることから来るストレスと、将来に対する不安から逃れるため、糖質に手を出してしまっていた。

ギラギラと太陽が照りつける7月半ばの正午、もうじき息子は夏休みに入るため、糖質もしばらく接種できなくなると考えた美智子はタンスに隠していた21gの糖質を取り出す。道具を用意し、まさに今というタイミングで美智子は飛び上がった。チャイムの音である。

「はい、どちら様でしょうか」

「すみません水道局の者です」

「大阪ガスです」

「電力会社の者です」


美智子は動揺し、致死量の糖質を一気に吸い込んでしまった。


「はあああああああああ!ちんぽこどっこいしょ!ちんぽこどっこいしょ!」


美智子は発狂し、家を飛び出す。裸足のまま、裸足のママが走り去る。裸足のままで飛び出して、あの列車に乗っていこう。

駅のホームに着くと、行き先など確認もせずに目についた電車に乗り込み、発狂する。その様はまるで走り出した電車のようである。こうなるともう誰にも止められない。

これを一度見た乗客は、狂気を受動喫煙してしまう。狂気は伝播するのである。

しかし彼らはそれに気づくこともなく、この狂気をスマホに収め、世界に拡散していく。


その様はまるで、狂気を別の狂気が喰らっているようである。

果たして、狂っているのはどちらなのか。

果たして、この列車は栄光に向かって走っているのだろうか。

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